橋下徹大阪府知事が代表の地域政党「大阪維新の会」に、自民党籍を持ちながら所属している議員を巡り、自民党大阪府連がごたごたしている。自民をとるか知事をとるか「踏み絵」を迫るべきだとの強硬意見が出る一方、国政選挙などへの影響を懸念する声も出ている。
「2重党籍」議員の問題を話し合った自民党大阪府連の役員会は、玉虫色決着となった。計38人の大阪府議、大阪市議、堺市議が、10年4月に橋下知事が立ち上げた「大阪維新の会」に所属している問題を巡り、「離党勧告」を迫るかどうかが議題だった。
実際には勧告しない可能性も含め党本部と協議
役員会は2010年8月7日にあった。結局、8月下旬以降に党本部と協議したうえで結論を出すことになった。形式上は、すでに府連の党紀委員会が決めていた「全員への離党勧告」の方針について「了承した」。しかし、実際に大規模な離党者続出が起きては、「組織の存続にもかかわる」(府連会長の谷川秀善・党参院幹事長)として、実際には勧告しない可能性も含め、党本部と協議することになった。
自民党の危機感の背景には、「維新の会」の勢いがある。2010年4月に発足直後、5月の大阪市議補選(福島区)で、同会候補が自民や民主の候補らを破り初勝利し、7月の同補選(生野区)でも、2位候補の倍近い得票を得て「圧勝」した。
橋下知事は、平松邦夫大阪市長への批判を強めており、「大阪都構想」を掲げ、府の権限強化を目指し、来10年春の統一地方選(大阪府議、大阪市議選を含む)へ向け、着々と歩を進めている。橋下知事はこれまでに「民主も自民も関係なく、国政とは一線を画して維新の会に入れるよう門戸を開く」と宣言している。
そんな中で、自民の府議らは「維新の会」との「2重党籍者」への反発を強めている。ある府連関係者によると「相当腹に据えかねている府議もいる」。しかし、「踏み絵」を突きつけたところで、統一選を前に勢いを見せる「維新の会」を捨てて自民党へ戻ってくる保証はない。
「府連分裂なんて冗談じゃない」
それどころか、38人も地方議員が離党しては、国政選挙や府知事選や大阪市長選への影響も大きい。選挙日程は立て込んでおり、11年春に地方選、11年12月には大阪市長の任期満了、12年2月には府知事の任期満了、13年夏には参院選があり、衆院議員の任期満了も迫る。先の府連関係者は「近畿地区の衆院比例代表も含め、国会議員関係者の中には、『府連分裂なんて冗談じゃない』と離党勧告に大反対の人もいる」と明かした。
大阪府議会のサイトによると、10年7月26日現在の最大勢力は「大阪維新の会」府議団で27人、次が自民党府議団で25人だ。「維新の会」27人中、二十数人は元自民府議団・自民系会派の府議だ。
「大阪維新の会」府議団の松井一郎幹事長に、自民側の「離党勧告」の動きについて質問すると、「私は気にもならないし、ほかの議員もそのようだ」と話した。10年8月9日には議員団の幹事会があったが、動揺は全くみられなかったという。
「大阪をどう変えるか、どういう政策を実現するか、に日々頭を使っている。府民が大事なのであって、自民党がどうしたこうした、という話には関心ありません」
橋下知事を巡っては、自身は大阪市長選へ転身し、後継候補に9月末に読売テレビを退社する辛坊治郎・解説委員長兼キャスターを擁立するのでは、との憶測も流れている。大阪政界がどう動くのか、しばらく予断を許さないようだ。