米国の富豪たちの間で、資産の半分を慈善活動へ寄付する活動が広がっている。活動への参加呼びかけを今後国外にも広げるようだが、日本の「富豪」たちはどう対応するのだろうか。
著名投資家のウォーレン・バフェット氏と米マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ夫妻が呼びかけ人だ。2010年8月4日、バフェット氏が計40人の米富豪の個人・一族が協力すると署名した、と発表した。
ジョージ・ルーカスやバロン・ヒルトンも賛同
協力者たちの名前も公表しており、「スターウォーズ」シリーズで知られる映画監督ジョージ・ルーカス氏やホテル王、バロン・ヒルトン氏らの名前がでてくる。生前もしくは死後に少なくとも資産の半分を慈善団体へ寄付することを公に誓約してもらうという活動で、10年6月から呼びかけを始めていた。
米のウォール・ストリート・ジャーナル(日本語電子版、8月5日)によると、バフェット氏は、海外からも参加者を募るため、「今後数か月間に、中国やインドの富豪とも会い、キャンペーンについて説明する予定だ」と述べた。「日本」の名前は出てこなかったようだ。
一方、共同通信(8月6日)は「バフェット氏らは、米フォーブス誌の長者番付上位400人に呼び掛ける方針」と伝えた。同誌が10年3月に発表した世界長者番付によると、上位400位以内には、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(89位)ら日本人9人の経済人の名前が挙がっている。
この9人のうち、複数の人物の会社広報に取材を申し込もうとしたが、「会社ではなく個人のことですので……」「今日中に本人と連絡を取るのは無理だと思います」といった反応だった。
日本は「陰徳の美学」、根付くか寄付文化
日本国内でNPO(非営利団体)活動を支援する活動をしているあるNPOの30代の担当者は、バフェット氏らの取り組みについて「アメリカらしい動きだと思います」と感想をもらした。米国では寄付は富裕層がするもの、一方英国では多くの人が幅広く寄付する、という「型」があるという。日本は英国型だが、まだ寄付文化が根付いているとは言い難いのが現状だ。
日本の著名人たちも実は寄付している人も少なくないが、多くは表に名前を出すことに抵抗を感じており、「名前は言わないで欲しい」という要請がかなりあるのだという。良いことは、人に知られずに行うべきだという「陰徳の美学」が影響しているようだ。
それでもこの担当者は、バフェット氏らの取り組みが日本にも広がることに期待を寄せる。著名人の寄付が表に出ることで「人々の寄付への関心が高まるから」だ。また、寄付に至らなくても、「こんな社会的な活動をしている団体があるのか」と、寄付を集めている団体の活動へ興味をもってもらえれば「それだけでも関係者は喜ぶと思います」。
果たして、名前を公表しての「資産半額を寄付」の輪は、日本で広がりを見せるのだろうか。