党員・サポーターも投票できる民主党の代表選が迫っている。政権交代を経た今回の代表選は、「首相を選ぶ」色彩を帯びる。永住外国人への地方参政権付与法案をめぐり与党内でも異論が出る中、民主の党員・サポーターは在日外国人も登録できる点を問題視する声が出てきた。外国人が首相選びに影響力を及ぼすのでは、というわけだ。
「外国人への投票参加見直せ」。産経新聞は社説にあたる「主張」欄で、民主党代表選についてこう訴えた(2010年8月4日付)。
「在日外国人の方でもOKです」
民主代表選は、政権交代前は「野党党首を選ぶにすぎない」ものだったが、今回は新・党代表が首相を務めることになるのが通例だ。このため、「主張」記事は「首相選出過程の一部を外国人の手に委ねるもの」と指摘し、「憲法違反の疑いが濃い外国人参政権の行使を実質的に許すものだろう」と批判している。外国人による政党などへの寄付を禁じた政治資金規正法の趣旨にも反する、として「早急に改善すべきだ」と訴えている。
「民主党を応援したい18歳以上の方なら、どなたでもなれます」(在外邦人または在日外国人の方でもOKです)。民主党のサイトでは、サポーターについてこう説明している。会費は年間2000円だ。党員についても「在外邦人または在日外国人の方でもOK」との説明がある。
民主党組織委員会は、10年度の「党員・サポーター」総数について、34万7733人と発表している(今後、二重登録などを精査し、後日「有権者数」を公表)。このうち在日外国人が何人含まれているのかは公表していない。ちなみに、代表選に参加するには「毎年5月末までに」登録されている必要がある。
民主代表選は、9月1日告示、14日投開票の日程が決まっている。菅直人首相が立候補を表明し、対立候補の擁立に向けた動きも複数出ている。代表選の仕組みはこうだ。「有権者」は、国会議員(413人)と地方議員(約2300人)、党員・サポーターだ。ポイント制で、国会議員は1人2ポイントで計826ポイント、地方議員は100ポイント(ドント式)、党員・サポーターは300ポイントだ。300ポイントは全体の約24%を占め、十分に影響力を行使しうる。党員・サポーターは、全国に300ある小選挙区ごとに郵便投票し、各小選挙区でトップの候補に1ポイントが与えられる。総ポイントの過半数を得る候補がいない場合は、上位2人から国会議員による決戦投票で決める。
「開かれた党という考え方から」
慶応大学の非常勤講師も勤めている自民党政務調査会の田村重信調査役(57)は、在日外国人も参加できる民主代表選について、8月1日のブログで、「民主党代表選は外国人勢力が影響力を行使する絶好の機会」などと指摘している。田村氏に取材すると、「永住外国人の地方参政権付与で与党内でももめている段階なのに、国政を超えて一気に首相を選ぶ『選挙』に在日外国人を参加させて良いはずがない。この制度がいかに危険なものか、訴えていきたい」と話した。「数が少なかったとしても、キャスティングボードを握る可能性がある」とも主張した。
また、日本大学の百地章教授(憲法学)は、「外国人の選挙権行使は、たとえ地方レベルでも憲法違反だ。まして、事実上の首相選出につながる今回の民主党代表選に外国人が参加することなど許されないし、危険極まりない。憲法違反の疑いも濃厚といえよう」と話している。なお、在日外国人への参政権付与については、憲法上禁じられていない、とする学者もいる。
民主党は取材に対し、今回の代表選で在日外国人が投票できることについて「現時点で特に問題はないと考えている」と回答した。理由については「開かれた党という考え方から、外国人の党員・サポーターへの登録を排除する規定を設けていない」とした。
また、登録作業については、国会議員か候補予定者が代表者を務める総支部が党本部に提出することに原則的になっているため、「党員・サポーターとしてふさわしくない人物は、国籍を問わず、総支部の段階で登録名簿に記載されない」としている。
党員・サポーターの中に在日外国人が何人含まれているかを公表していない点については、「(数は)把握していない。登録にあたり国籍を申告する制度を設けていないため」と明かした。
法務省の外国人登録者統計(09年末)によると、登録者全体は約218万人、うち永住・特別永住外国人は約94万人だ。