身の回りは軽量の小物で固め、ファッションは自分の好みを貫き、人付き合いはどっぷり漬からずマイペース――。ある意識調査から、10代後半、20代前半のこのような特徴が浮かび上がった。
子どもの頃がバブル崩壊時期と重なる20代前半と、日本が不況の時代しか知らない10代後半の若者たち。この世代の人間関係や消費の特徴を表すキーワードとして、「軽」という言葉が出てくる。
人とつながっていたい思い強い
「若者の○○離れ」「人付き合いが苦手」などと語られがちな若者だが、ある調査結果を見ると少し違った側面が見えてくる。
ヤフーバリューインサイトは2010年7月26日、15歳~48歳の男女を対象に、世代ごとの消費や生活に関する意識・価値観の違いを比較調査した結果を発表した。10~40代を年代ごとに4つに分類している。
人間関係では、10代と20代で「自分の考え方に近い人とだけ付き合いたい」「年齢が上の人との付き合いはおっくうだ」という回答が30代以上より高い。さらに10代は、対面での会話よりもメールの方が気持ちが伝わると考え、SNSなどネット上で知り合った友人も多いとの結果が出た。ネット上で友人をつくるのだから、必ずしも人嫌いではなさそうだ。
若者事情に詳しい伊藤忠ファッションシステムの吉水由美子氏は、「実は若い人は、人とつながっていたいとの思いが強い」と話す。ただし仲間内では「連絡を取り合っている」という事実が重要なのだという。「ケータイメールにすぐに返事する、絵文字をいくつ使う、といったことを重視します」と吉水氏。何でも打ち明ける親友は限られていて、多くは当たり障りのない「軽めの付き合い」のようだ。
モノに関する調査結果では、車や高級ブランドについて、特に10代後半の若者の購買欲が低い。しかし、ブランド物に興味がないイコール、ファッションに無頓着、ではない。むしろ「自分なりのこだわりがある」と答えたのは10代、20代が上の世代を上回っており、流行しているものを買いたがる。「欲しい」と思えば、値段が安くても構わない。高価だから、ブランド品だからといった選び方はしないという考え方を持っていることがうかがえる。
プロ野球選手も「軽さ」重視
モノに軽量さを求めるのも、10代と20代の特色だ。携帯音楽プレーヤーやスマートフォンは、年代が下がるほど所有に対する意欲も増す。「マイカーで高価なブランド品を身につけ外出するのがオシャレ」という感覚とは真逆の、「ケータイをポケットに入れ、音楽を聴きながら、安くてもお気に入りの服を身にまとって街を軽やかに歩く」というのが若者のライフスタイルに見える。
この調査とは別に、若者がモノに「軽さ」を求める傾向が見られる事例がある。その一つが運道具だ。あるスポーツ用品メーカーのカタログでは、10年前のサッカーシューズの最軽量品が235グラム(26センチ、片方)だったのに対して、10年のカタログでは215グラム。メーカーが用具の機能性を追求する姿勢は当然だが、軽量化に対する消費者のニーズが高まったのも事実のようだ。
プロ野球の世界でも同じ傾向が見られた。つい先日、日本人最速158kmをマークし、話題になった東京ヤクルトスワローズの由規投手(20)は、グローブやスパイクといった用具を選ぶ際に「軽量」を重視、あえてアマチュア選手向けに製造されたブランドを使用しているという。
前出の吉水氏は、10~20代の若者がモノを買える年齢になった頃は、品質に優れた製品が当たり前になっており、その環境の下で育ってきたという。それだけに若者は目が肥えており、軽さを含めて「機能的でデザインもよく、自分に合った製品」へのこだわりが強いのだと説明している。