立ったままベルトで固定してフライト 格安航空会社「立ち席」実現するのか

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   座席なし、乗客は立ったままで飛ぶ航空機――。少々突飛な計画を考え出しのが、中国の新興航空会社、春秋航空だ。徹底したコスト削減による超低価格の料金で成長を続けており、同社初の国際線として茨城航空へのフライトも就航した。

   ただ、法的な規制もあり、これまで「立ち乗り席」を提供している航空会社はない。安全面には不安が残るが、料金がさらに格安となれば消費者にとっては魅力的だ。実現は可能なのか。

飛行時間1時間以内のフライトでの採用を想定

日本で「立ち席」申請した航空会社はない
日本で「立ち席」申請した航空会社はない

   春秋航空は2005年、中国初の民間航空会社のひとつとして誕生した。低価格料金を追求するため、機内サービスを削って食事や飲み物を有料化し、航空券販売のオンライン化を進めた。上海を拠点に中国各地へ国内便を飛ばすほか、10年7月28日には国際線第1号として茨城空港への便も就航した。

   「機内を改造して座席数をできるだけ増やす」「機体はほとんどリース」といった「工夫」を進める中、今度は「立ち乗り席」を計画したという。最初に報じられたのは09年。米ニュースサイト「MSNBC.com」は、春秋航空・王正華董事長(会長)の発言として、「バーにあるスツールのようなイメージ。安全ベルトが最も重要で、腰の周りを固定するようなものになるだろう」と、立ち乗り席について述べた記事を掲載した。ただ公式には、これ以上具体的な計画について明らかにしていない。

   同様の計画は、アイルランドの格安航空会社ライアンエアーも立てている。ウェブサイト上で「立ち席」のイメージ画を公開。立った乗客が背もたれできるつくりで、胸のあたりにジェットコースターの安全バーのようなものがある。座面がついているので直立不動状態ではなく、お尻をつけて体重を預けられるようだ。絵柄からは確認できないが、安全ベルトも装着すると見られる。飛行時間1時間以内のフライトでの採用を想定し、「料金5割引、さらには無料だったら立ち席を利用するか」と顧客に問いかけている。

腰掛けられる席がないと基準満たせない

   春秋、ライアン両社とも安全面を確保したうえでの計画としているが、基準は満たせるのだろうか。

   国土交通省航空局航空機安全課に聞いたところ、航空機の安全基準は世界ほぼ共通で、外国での基準を満たしていれば基本的に日本でも問題なしと見なされるという。外国の航空会社が、その国の政府から「立ち席」の許可を得られれば、日本での飛行も理論上可能だ。

   日本の場合、航空機の設備の安全性の基準については、航空法第十条に定めがあるが、細かな基準内容については「耐空性審査要領」に書かれているという。航空機安全課の担当者によると、「座席については安全上、航空機が非常事態で着陸した場合に乗客が保護されるように、『着座した姿勢』をとれるつくりでなければならないと決められています」とのこと。つまり日本では、確実に腰掛けられる「席」がないと安全とはみなされないようだ。これでは立ち席だと、当局の認可は得られそうにない。なお、立ち席を申請した日本の航空会社は、これまで1社もないという。

   とは言え、春秋航空が中国当局を説得できれば立ち席は実現できる。上海の春秋航空本社に電話すると、グループ会社のマーケティング担当者が取材に応じた。立ち席については、会社として計画があるものの、「中国政府とは、公式な折衝はしていない」と明かす。続けて、「これまで立ち席の認可を得た航空会社はなく、実現が困難なことは当社も理解している」と話し、今後の見通しについても未定だとのことだった。

   どうやら現状では頓挫しているようだが、「上海―茨城往復4000円」と破格の運賃で、日本のマスコミにも多く取り上げられた春秋航空だけに、革命的な「立ち席」が将来的に実現する可能性もゼロとは言い切れない。

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