腰掛けられる席がないと基準満たせない
春秋、ライアン両社とも安全面を確保したうえでの計画としているが、基準は満たせるのだろうか。
国土交通省航空局航空機安全課に聞いたところ、航空機の安全基準は世界ほぼ共通で、外国での基準を満たしていれば基本的に日本でも問題なしと見なされるという。外国の航空会社が、その国の政府から「立ち席」の許可を得られれば、日本での飛行も理論上可能だ。
日本の場合、航空機の設備の安全性の基準については、航空法第十条に定めがあるが、細かな基準内容については「耐空性審査要領」に書かれているという。航空機安全課の担当者によると、「座席については安全上、航空機が非常事態で着陸した場合に乗客が保護されるように、『着座した姿勢』をとれるつくりでなければならないと決められています」とのこと。つまり日本では、確実に腰掛けられる「席」がないと安全とはみなされないようだ。これでは立ち席だと、当局の認可は得られそうにない。なお、立ち席を申請した日本の航空会社は、これまで1社もないという。
とは言え、春秋航空が中国当局を説得できれば立ち席は実現できる。上海の春秋航空本社に電話すると、グループ会社のマーケティング担当者が取材に応じた。立ち席については、会社として計画があるものの、「中国政府とは、公式な折衝はしていない」と明かす。続けて、「これまで立ち席の認可を得た航空会社はなく、実現が困難なことは当社も理解している」と話し、今後の見通しについても未定だとのことだった。
どうやら現状では頓挫しているようだが、「上海―茨城往復4000円」と破格の運賃で、日本のマスコミにも多く取り上げられた春秋航空だけに、革命的な「立ち席」が将来的に実現する可能性もゼロとは言い切れない。