大手百貨店が発表した2010年7月の既存店売上高(速報)は、軒並み前年同月を下回ったが、三越伊勢丹ホールディングス傘下の伊勢丹は2年ぶりに前年を上回った。なかでも新宿本店で、売上げのおよそ半分を占める衣料品が伸びたことが勝因となった。
三越伊勢丹ホールディングスの伊勢丹の7月の既存店売上高は前年同月比0.6%増で、08年7月以来、2年ぶりのプラスだった。なかでも新宿本店は売上高が同2.4%増、客数は4か月連続プラスの同3.3%増と好調だ。商品別では、婦人服が同1.3%増、紳士服が同7.7%増と衣料品がよく売れた。三越伊勢丹HD広報担当者は、「クリアランスセール、プロパー(定価商品)とも売れ行きがよかった」と話している。
低価格路線より高品質にこだわる
伊勢丹新宿本店では、売上高に占める衣料品の割合がおよそ半分で、ほかの店舗に比べて高い。夏物中心に売れ、婦人服ではドレス、カットソー、ブラウス、婦人靴、日傘、帽子が、紳士服ではクールビズなどのカジュアル服が好調だった。
夏物がよく売れたのは、猛暑で需要が伸びただけではないようだ。三越伊勢丹HD広報担当者は、
「09年12月から新宿本店で衣料品の売上げのマイナス幅が少なくなり、10年5月から堅調に伸びています」
といい、衣料品への客の戻りが見られている。
不景気で客離れが進み、安いプライベートブランド(PB)を売り出したりと、値下げする百貨店が相次ぐなか、同店は低価格路線に走らず、百貨店ならではの高品質な商品にこだわり続けた。なかには従来品より安くした物もあるが、素材やデザインのランクを下げて値下げするのではなく、価格と価値に見合った商品を展開することに力を入れているという。