日本テレビ系読売テレビ(大阪市)の報道局解説委員長、辛坊治郎さん(54)が近く退職する。東京でも放送されている「ウェークアップ!ぷらす」のキャスターなどで知られ、退職後を巡っては政界入りも取りざたされている。橋下徹・大阪府知事との連携説も飛び出し、注目を集めている。
2010年8月3日、辛坊さんはレギュラー番組「朝生ワイド す・またん!」で、自身の9月末での退職を報告した。うわさされる政界入りについては「出ません」と話したが、「将来は白紙です」と含みも持たせた。関西ローカルの人気バラエティ「たかじんのそこまで言って委員会」などの番組は、退職後も当面出演を続けるそうだ。
「シンクタンクの研究員に」と答えているが…
「大阪市長選に?」(産経新聞、ウェブ版)、「政界進出か」(スポーツニッポン、同)など、辛坊さんの9月退職を伝える8月3日の報道は、辛坊さんの政界入り絡みの話題が目立った。一方、辛坊さんの本人コメントを載せた3日付朝刊の読売新聞によると、「10月からシンクタンクの研究員になる」と答えている。同記事には政界進出についてのやりとりは載っていない。
今回の辛坊さんの54歳での退職は突然の出来事なのだろうか。ある関係者の男性は「55歳ぐらいをめどに会社員生活に区切りをつけたい、と随分前から(辛坊さんが)話していた」と明かす。だから今回の報道には全く驚かなかったそうだ。これまでかなり忙しい生活を送ってきたので、退社後は「自分のためと世の中のために時間を使いたい」とも話していたという。
政界入りの話はどこから出てきたのだろうか。前回08年1月の大阪府知事選や10年7月の参院選でも、ニュース解説などの際の軽妙な語り口で人気がある辛坊さんを担ぎ出そうとする動きが水面下であった。さらに、週刊ポスト(10年7月16日号)は、「橋下徹大阪市長、辛坊治郎大阪府知事」構想のシナリオについて触れている。
ポスト記事によると、大阪都構想などで大阪市側と対立を深める橋下知事が、自ら大阪市長選(任期満了は11年12月)に乗り込み、府知事(同12年2月)に親しい後継候補として辛坊さんをかつぐ可能性があるとしている。同記事中、辛坊さんは知事選への立候補について「噂はありますが、あり得ません」と否定している。こうした状況の中、「大阪市長に?」という憶測も流れることになる。
日本の政治経済を論じた本も出版
この4月には、日本の政治経済について論じた『日本経済の真実』と題した本を兄と共著で出すなど、政治への関心がなくはなさそうだ。ちなみに国政なら3年後の13年夏に参院選があり、衆院選は途中で解散がなければ任期切れの13年8月末までに実施される。10年7月の参院選で「フラれた」政党が再度働きかける可能性もある。
もっとも、辛坊さんは「自分のため」に時間を使うのかもしれない。読売テレビサイトの「解説委員室」に辛坊さんが10年6月29日に書いた記事には、「定年後に予定していた、ヨットでの単独太平洋横断」について触れている。これはダジャレを言うための文脈だが、辛坊さんの知人情報では、「退職後のヨット世界一周」を日頃から口にしており、ヨットを買い換えた、との話もあるそうだ。
果たして、辛坊さんは、本当のところ、退職後にどういう道に進むのだろうか。ある大阪市会議員に話を聞いてみると、辛坊さんの大阪府知事選か大阪市長選への立候補について、「具体的な話に私自身が関与している訳ではないが、可能性としてないとは言えないと思う。これまでにも政治の場に彼をかつぎ出そうという動きはあった」との見方を示した。