「泣き声だけの通報では、張り込みや聞き込みなどはしていません」
この事件では、3度も通報がありながら、下村早苗容疑者らが姿を見せるまで張り込んだり、マンションの近隣の部屋などに聞き込んだりしていなかった。なぜ、こうした対応をしなかったのか。
大阪市こども相談センターの相談支援担当課長代理は、こう釈明する。
「今回は、泣き声の通報でしたが、こうした通報は、非常に多いんです。調べてみて、夜泣きだったり、子どもがぐずついていたりすることもあります。近所から疑われてショックを受ける人もいますので、風評を流さないよう、泣き声だけの通報では、張り込みや聞き込みなどはしていません。そうするのは、親が大声で怒鳴ったり、子どもを叩いている音がしたりといった場合です。今回は、こうした情報がありませんでした」
虐待通報は、2009年には300件ほどあったが、その2割が泣き声だけの通報だった。
ところが、通報した女性は、最初の通報で、泣き声のことばかりでなく、2人の子どもがインターホン越しに「ママー、ママー」などと夜中の長時間にわたって叫んでいたことをセンター側に伝えていた。これは、部屋から泣き声が漏れてくるような状況ではないが、それでも異常だとは思わなかったのか。
担当課長代理は、これに対して、こう言うのみだ。
「確かに、こういうことはあまりありません。今となっては、そう言われますと、確認できていなかった、申し訳ありませんとしか言いようがないです。ご指摘の件につきましては、深く受け止めています」
最後の通報日以降に、何もフォローしなかったのは、様子を見ていたからだという。
厚労省の虐待防止対策室では、張り込みや聞き込みについて、「確からしさや重要度に応じて、ケース・バイ・ケースで判断するものと考えています」と言っている。強制立ち入りについては、親子が特定されない状況では、憲法上難しいという。