資金決済法の施行で、これまでほぼ独占状態だった銀行の「資金決済」に、一般事業会社の参入が可能になった。先行する米国で、個人間の資金移動を可能にした「Paypal」(ペイパル)や、国際送金を担う「WESTERN UNION」(ウエスタン ユニオン)がいよいよ日本に上陸する。「資金移動業者」として金融庁に登録すれば、送金サービスが可能になる。将来は銀行を通さず、SNSやツイッターでも送金できる時代がやってくるわけで、その衝撃は大きい。
瞬時に金銭やりとり、手数料もかからない
野村総合研究所によると、年間288兆円(2008年度)ある消費支出のうち、現金や銀行の口座引き落としによる支払いが81%を占めている。IC型電子マネーや非接触型クレジットカード、デビットカードといった電子マネーは、駅改札やコンビニでの買い物、ネットショッピングなどで見かけるようにはなったが、日本はまだまだ「現金社会」なのだ。
そうした中で、金融庁はプリペイドカードや電子マネーに関する法律を整備し、資金決済法を2010年4月に施行した。米国では一般事業者にも簡単な決済サービスを提供する「資金移動業者」が認められていて、その代表格が「ペイパル」だ。アカウントを取得すれば、ユーザー間で、瞬時に金銭の授受ができて手数料もかからない。
ペイパルは、米ベンチャー企業のBumpの技術をiPhoneアプリに導入。これを使うと、送金する相手が隣にいても「電子送金」できる。両者がメニューでBumpを選んで同時にアイフォンを振ると、正しい相手であることを画面で確認できる。送金アプリで金額を入力。受け取る人に送金完了が通知される仕組みだ。
日本での実現には本人確認やマネーロンダリングへの対応というハードルがあるが、こうした問題が解消できれば、サービス提供は可能とみられている。野村総研金融戦略コンサルティング部・上席コンサルタントの安岡寛道氏は、「ケータイを使った非接触型クレジットカードの技術は、日本でも今後ますます広がりそう」とみている。
銀行介さず、SNSやツイッターでも送金できる?
「資金移動業者」の登場で、近い将来にこんなことができるかもしれない。
たとえば、電子マネー「Edy(エディ)」を運営するビットワレットが資金移動業者で、AさんもBさんもEdyを使っていた場合、BさんのEdy番号(アカウント)をAさんが知っていれば、AさんはBさんのEdy番号宛に金額を指定して振り込むことができる。Bさんは届いたお金を、ビットワレットが委託するコンビニなどで現金化できる。
また、AさんがSNSのmixiを利用、BさんがGREEを利用していて、mixiとGREEの双方が資金移動業者に登録していれば、AさんのmixiアカウントからBさんのGREEアカウントに送金することができる。
ツイッターが資金移動業者であれば、ツイッターID宛の送金が可能になり、たとえばAさんのアカウントから、支持する政治家のアカウントに献金できるようにもなる。
ネットショッピングの場面では、売り手と買い手が直接で遣り取りすることも可能だ。
現在、日本で「資金移動業者」に登録しているのは、WESTERN UNION、ウニードス、ジェイティービー、トラベレックスジャパン、楽天のわずかに5社。金融庁は、「電子マネーを必ず現金化できるというのは語弊があります。資金移動業者の登録の際にスキームを判断するので、認めないものもあります」と慎重だ。