消費不振が伝えられた東京・銀座に、再び活気が戻りつつある。一翼を担っているのが、このところ急増中の中国人観光客だ。中には、20万円分も高級化粧品をごっそり買っていく猛者もいるというのだ。
「男性の方でも、ブランドを指名買いしていくんですよ。中には、資生堂などの高級化粧品を10個、20万円分もまとめ買いされた方もいましたね」
三越は、免税店売り上げが1.4倍
三越銀座店の広報担当者は、中国人観光客の購買意欲について、こう驚く。
このところ、銀座では、中国人観光客が増え、それを取り込む店側の動きも次々に報じられている。
背景にあるのが、2009年7月に、中国人の個人観光ビザが、年収25万元(約340万円)以上の富裕層を対象に発給されるようになったことだ。10年7月からは、年収6万元(約80万円)以上などの中間層にも発給され、中国人観光客がさらに増えると予想されている。
その需要に応えようと、三越では、9月11日に売り場面積を1.5倍に広げる店舗内に、外国人観光案内所を設置することを決めた。カウンターに2、3人を常駐させ、銀座の街の情報も伝える。増床したのは、必ずしも中国人狙いではないが、広報担当者は、「中国のお客さまにも満足していただきたい」と話す。
同店の免税店は、10年1~6月までの売り上げが、前年同期に比べて1.4倍にも増えた。その8割が中国人だといい、英バーバリーなどの高級ブランド服も人気だという。増床後は、伊フェラガモも店内に出店し、中国人観光客を取り込むと報じられている。
一方、ライバルに当たる松屋銀座も、正面受付に中国語の案内係を置き、中国語のフロアガイドも各階に掲げた。8月に拡充する高級ブランド雑貨売り場は、中国人狙いというわけではないが、その取り込みにも熱心だ。
「ルイ・ヴィトンなど海外のブランド物が、中国の方に人気ですね。化粧品などは日本製も人気で、5万円の高級美容液を2、3個まとめ買いする方もおられます」(広報課)
観光バスの道路横づけでトラブル
銀座エリアでは、デパートや高級ブランド店ばかりでなく、家電量販店などにも、中国人が大勢訪れている。
ビックカメラによると、有楽町店の免税コーナーには、団体の中国人買い物ツアー客がひっきりなしに訪れる状態だ。
「おいしく炊けると評判の高級炊飯器や、デジタルカメラ、iPodなどが人気ですね。おみやげ用に大量にお買いになって、両手いっぱいに抱えて帰る方がとても多いです」(グループ広報)
中国人観光客の平均購買額は、5万円ほど。中には、カードや現金の札束を用意し、数十万円も払う人もいるという。
銀座の商業団体では最も大きい「銀座通連合会」の事務局長は、こう話す。
「最近、たしかに中国人の方が銀座にお見えになることが多くなりました。個々のお店によって違いますが、かなり売り上げアップになっているようですね。特に、客の入りは、何でもそろっていて、限られた時間で効率的に買い物ができるデパートなどが多いようですよ」
ただ、中国人観光客が増えたことで、トラブルも起きている。
例えば、観光バスを数台連ねて来て、道路に横づけするケースだ。駐車場が不足していることもあるが、エンジンをかけっ放しにしたり、時間通りに戻ってこなかったりすることも多いという。また、団体で歩道いっぱいに歩き、大声を出して話すのも目立つとしている。
事務局長は、「売り上げが厳しい状況で、中国の方が貢献してくれているのも事実です。今後は、ショッピング案内の表示方法を考えるなどして観光客の増加に対応していきたい」と話している。