「防衛白書」異例の発表延期 菅首相対応にマスコミから批判

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   異例の発表延期となった「防衛白書」をめぐる菅直人首相や仙谷由人官房長官の対応に、「事なかれ主義」(読売新聞)「弱腰外交」(産経新聞)「その場しのぎ」(日本経済新聞)と、批判するマスコミが目立つ。

   防衛白書は防衛問題に対する国民の理解を得るため、毎年7月下旬から8月初旬に刊行され、2010年版で36回目になる。延期は初めてことで、さまざまな憶測を呼んでいる。

日経新聞「不自然さが残る」と指摘

「弱腰」とささやかれる?菅首相
「弱腰」とささやかれる?菅首相

   仙谷官房長官が2010年7月30日に予定していた「2010年版防衛白書」の公表の先送りを発表したのが7月28日。理由を、「韓国哨戒艦沈没事件をめぐる直近の状況に関する記述を加えることにした」と説明した。

   日本経済新聞は7月30日付の社説で、「説明に不自然さが残る」と指摘している。菅首相は7月28日、首相官邸で記者団に「大きな課題だったので、これ(哨戒艦事件)を(白書に)盛り込むべきと、私が判断した」と語った。

   しかし、そもそも韓国哨戒艦沈没事件が起きたのは3月末。韓国軍と米・英などの専門家が参加した合同調査団が、沈没原因を「北朝鮮の魚雷による爆発」と断定したのが5月下旬。その後のG8(主要8か国首脳会議)で議論されて、さらに国連安全保障理事会が議長声明を採択したのが7月上旬だから、「大きな問題」という認識があったのならば、早くに指示できただろうし、白書に反映する時間は十分にあったはずだ。

   政府が発表を躊躇したのは、「竹島」をめぐる記述にあるとされる。防衛白書には2005年版以降、竹島を「わが国固有の領土」と明記しており、これに対して韓国側が毎年反発してきた。2010年の8月29日は「韓国併合100年」の節目にあたる。政府は認めていないが、そのタイミングで白書を発表すれば、韓国内にくすぶる反日感情に火が点きかねないと判断したと、容易に想像できる。

「到底、納得できる説明ではない」

   読売新聞はこうした政府の対応を、「日韓関係に波風を立てたくない、という無責任な事なかれ主義であり、今後に禍根を残すと言わざるを得ない」(7月29日付の社説)と、痛烈に批判。仙谷官房長官の説明にも、「到底、納得できる説明ではない」と一蹴している。

   産経新聞は「防衛白書 了承見送り」の見出しで、2010年7月28日付1面で取り上げた。それによると、政府や防衛省内からも不満が漏れ、菅首相を「弱腰」と批判する声も少なくないとしている。「場当たり的な対応は、問題をクローズアップさせただけ」と指摘し、政府高官のコメントとして「官邸の政治センスを疑う」と報じている。

   一方、防衛省は当初の予定どおり約1万部、約1000万円をかけて準備を進めてきた。修正が加えられる防衛白書について、同省は「記述内容について、どの程度の加筆や修正があるのか、まだわかりませんので、差し替えや刷り直しを含め、やり方は現在検討調整中です」(広報課)と話し、少々困惑ぎみ。

   発表は9月以降になりそうで、問題となっている竹島の記述も今のところ変わる予定はない。結果的に、またも税金のムダ遣いが発生するのと、領土という重要問題で、菅首相が「曖昧な態度を取りかねない」という不安を抱かせたようだ。

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