日本のヤフーの検索エンジンがグーグルになる――。ヤフーは決算発表の席上、米グーグルとの提携を発表、グーグルから検索エンジンと検索連動型広告配信システムの提供を受けると発表した。
米ヤフーの検索エンジンを使っていたが、同社がマイクロソフト(MS)の検索エンジンに乗り換えるため、日本のヤフーも別のエンジンを探さねばならない状況だった。日本では検索市場のシェアを争っていた最大のライバルをパートナーに選んだ理由は何か。
「味付けは独自に行う」と違いを強調
ヤフーの井上雅博社長は2010年7月27日、10年度第1四半期決算説明会で、グーグルから検索エンジンと検索連動型広告配信システムの提供を受けることを明らかにした。検索エンジンは、ヤフー独自の調整を加えてカスタマイズするという。井上社長は、「グーグルから基本的な部分は提供してもらうが、その『味付け』は独自に行う」と、グーグルとの違いを強調してみせた。移行時期は未定だが、「なるべく早く」としている。
ヤフーは現在、米ヤフーから検索エンジンの提供を受けている。09年7月、米ヤフーはMSと検索事業で提携、MSの検索エンジン「ビング」を導入すると発表した。日本のヤフーも検索エンジンを提供してもらう先を探す中、「総合的に判断して、利用者にとって一番よいものだと考えた」としてグーグルを選んだと井上社長は話す。グーグルは「確固たる日本語環境の検索エンジンと検索連動型広告配信システムを保有」していると、高い評価だ。「ビング」ほかも比較検討されたようだが、グーグルに軍配が上がった。
興味深い話がある。井上社長は06年5月10日、日本記者クラブでグーグルについて会見で話した。欧米ではグーグルに検索自動化の先を越されたが、「グーグルが日本版を作るまでにヤフーは自動化を達成したので、グーグルの優位性はない」とし、ヤフーのユーザーがグーグルに移る理由はないとした。
それから4年。「ヤフーの優位性」を語っていた井上社長は、最大級の評価をもって「宿敵」の技術を受け入れざるをえなくなった格好だ。
米ヤフーと「ねじれ関係」
ヤフーの発行済み株式は、ソフトバンクが38.6%を保有し、米ヤフーは34.78%で2番目だ。検索エンジンの採用で日米ヤフーは別の選択を行い、いわば「ねじれ」の状態になる。井上社長は、グーグルの採用について「(米ヤフーの)意に反して決定したわけではなく、経営トップと相談のうえ決めた」と説明。今後の両社の関係も全く変更はないという。
米国では「グーグル対ヤフー・MS連合」の図式だが、検索エンジンだけをとると日本は違う戦略だ。アスキー総合研究所の遠藤諭所長は、この「ねじれ現象」について「米ヤフーの世界戦略は、日本のヤフーにとって関係ない、違う軸で動いていくとの印象が強まった」と話す。そもそも今回の提携は、米ヤフーが独自のエンジンを捨てMSと組んだことが理由の「消極的」な出発点だったが、「検索エンジンとして最適、しかも広告システムに優れているグーグルを選ぶのは自然」と見る。筆頭株主ではない米ヤフーも「仕方ない」と了承するしかなかったのではないか、と遠藤氏。
井上社長は、現在使用している米ヤフーの検索エンジンでも、日本人ユーザーに提供する付加価値の高い情報は日本側で独自に提供していると話す。今後グーグルが検索の基盤になっても、高い自由度をもってサービスにあたると独自性を強調した。グーグルとの連合で、日本での検索市場のシェアは9割に達すると見られる。両社の検索、広告配信システムに関する契約期間は当初2年間。その間、どこまでヤフーは「独立性」を発揮できるかが注目される。