山岳遭難、安易な救助要請も ヘリ救助は「当たり前」なのか

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   埼玉県秩父市の山中で、遭難救助中の県防災ヘリコプターが墜落し、パイロットなど5人が死亡した。沢登りをしていた登山パーティーのメンバーが滝つぼに滑落し、救助を行うとする矢先の出来事だった。今回のケースに限らず、09年には北海道のトムラウシ山で8人が死亡するなど、山での遭難事故が後を絶たない。中には、自分の意思で登山したにもかかわらず、安易に救助要請を行うケースもある。こんな状況に、ヘリでの救助を有料化しようと検討した自治体もある。

ヘリ1機の維持費年間1億円以上

冬の富士山でも遭難のリスクは高い
冬の富士山でも遭難のリスクは高い

   ここ数年では、登山をする人は減少気味にもかかわらず、事故は増加傾向だ。

   日本生産性本部の「レジャー白書」によると、00年には930万人だった登山人口は08年には590万人と減少傾向だ。

   一方、警察庁の統計によると、09年の山岳遭難発生件数は1676件で遭難者数は2085件。そのうち死者・行方不明者数は317人で、いずれも1961年以降で最悪の数字だ。その分、遭難のリスクが高まっているとの見方もできる。

   また、全遭難者の実に60.2%が55歳以上。高年齢者の遭難が際だっている形だ。

   自治体は、一度救助要請を受けると、多大なコストをかけて救助に向かうことになる。

   全国で最も遭難件数と死者数が多い長野県を例に取ってみると、09年に173件発生した山岳遭難に対して、警察官や山小屋関係者、消防団など延べ1843人が出動。1件あたり16.4人が出動している計算だ。さらに、この173件のうち、全体の84.4%にあたる146件にヘリコプターが出動している。そのうち4件が民間ヘリだ。民間ヘリが出動した場合、1時間あたり約50万円のチャーター料がかかり、その分は遭難者や家族が負担する形になる。逆に言えば、残り146件の警察・消防ヘリの出動については、任務の一環とされるため、費用は公費負担、つまり税金が費やされる形となる。ヘリ1機を維持するためには、人件費を除いても、少なくとも1年に1億円以上がかかる。

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