個性という前に基礎を身に付けなさい
坂東眞理子さんに聞く「若者の品格」/創刊4周年記念インタビュー第1回

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

「よそはそうでも、うちは違う」と言えるのが大事

坂東さん(右)と「J-CASTニュース」大森編集長
坂東さん(右)と「J-CASTニュース」大森編集長

大森 そういった若者に何かアドバイスがありますか。「品格」を身に付けるにはどうしたらいいですか。

坂東 まず、基礎を身に付けて欲しいと思います。足元が固まっていないのに、「自分らしくありたい」「個性を発揮したい」「オンリーワンになりたい」という若者がいますが、人と同じことができるようになってから、自分らしさを付け加えるのが筋です。古くさいとか、役に立たないとか、いろいろ言い訳を並べて、努力せずに、自分らしさばかりを追求する。これは「品格」のない行為で、見ていて痛々しいです。

大森 品格ある若者を育てるには、親はどうしたらいいでしょうか。

坂東 本人に苦労させ自分で成功する経験をもたせること。私の経験では、苦労して成功した人ほど我が子を甘やかす傾向があります。自分の苦労を子どもにさせたくない。そういう思いが強いからでしょう。日本は今、格差社会と言われていますが、本当は豊かで、ある意味日本全体が成金状態の「一億総成金」です。子どもに豊かにものを与えられる状況でも、親が甘やかしたいという欲望をコントロールすることがとても大切です。親の手元を離れるというのも一つの手だと思いますよ。江戸時代、親は良い教育者になれないと考えられていたそうです。それで、他家に奉公に出したのが良い例です。今の若者も、大学に入る前に現実社会に触れ、その結果ぜひ勉強したいと思ったら入学する方がいい。英語圏では「ギャップイヤー」というシステムがあり、大学に進学する前にボランティア活動をしたり、海外に行ったりします。

大森 「友達も持っているから」と言われると、つい買ってあげたくなってしまうものです。

坂東 私たちの時代は時間もお金も十分になかったので、「よその家と同じことはできないの」と子どもも納得していましたが、与えられる状況で与えないのは本当に難しいですよね。でも、「よそはそうでも、うちは違う」と居直っていかないとダメだと思います。

大森 ある種の「挫折」も大事ですね。

坂東 努力してもできないこと、他人に負けてしまうことがあります。それで人生すねちゃう人もいますが、じゃあ自分は何ができるだろう、得意なことは何なのか、と考える。そして方向転換する。それには、現実と向き合わなければなりません。親や周りの人間がお膳立てするようではだめなのです。

【プロフィール】
坂東眞理子(ばんどう・まりこ)
昭和女子大学学長。1946年生まれ。東京大学卒業。69年総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、01年内閣府初代男女共同参画局長。『女性の品格』『親の品格』がベストセラーとなる。近著に『錆びない生き方』。

大森千明(おおもり・ちあき)
J-CASTニュース編集長。朝日新聞社でアエラ編集長、週刊朝日編集長などを務める。

1 2
姉妹サイト