新たな事実はない?
北朝鮮事情に詳しいコリア・レポート編集長の辺真一さんは、日本政府の説明や対応に疑問を投げかける。
「キッチンのある場所なら、何も別荘でなくてもよいわけです。警備上などから都心より軽井沢がいいというのは、分からないでもありません。しかし、滞在場所が次は都心に移るとされており、政府の言っていることがちぐはぐですよ。そもそも、115人も殺した元死刑囚が、一国の総理だった人の別荘に寝泊まりするなんて、常識外だと思います」
未確認なものの、観光したいと望んでいる金賢姫元工作員のために、ヘリで富士山を空から見学してもらったという情報も入ってきたそうだ。
「事実なら、とんでもない話です。爆破事件の犠牲者家族の神経を逆なでするものですよ」
別荘への招待は、鳩山前首相が在任当時、支持率回復狙いで進めてきたものらしい。しかし、2010年3月にあった韓国哨戒艦沈没事件で、7月の参院選前に招けなくなってしまった。辺さんは、韓国が北朝鮮の出方を見て、金元工作員をなかなか来日させなかったのが原因ではとみている。
では、来日が実現すれば、拉致の有力情報を聞き出せるのか。
この点についても、辺さんは懐疑的だ。
「確かに、政府が発表していない話もあるでしょう。しかし、金元工作員の話に『新たな事実はない』とも伝えられています。結局、鳩山さんや菅さんが北朝鮮に行くしか解決法はないと思います。トップ会談でしか、新たな道は開けないということです。今回のことは、自民党ができなかったことをやれば、マスコミの脚光を浴びてプラスに作用すると錯覚しているとしか思えませんね」