成田発パリ行きのエールフランス機内で、ビジネスクラスの乗客5人の現金が盗まれた問題で、事件から半年がたって、やっと容疑者が逮捕された。逮捕されたのは、何と同社の客室乗務員。現地の報道によると、容疑者は1年以上にわたって、乗客が眠っている間に現金や貴金属を盗んでいたといい、捜査関係者は「大量の現金を持つ日本人は、格好の標的になる」と指摘。「安全をカネで買う」面もあるビジネスクラスでの犯行なだけに波紋が拡がりそうだが、同社は現段階では「ノーコメント」の立場だ。
事件のきっかけとなったのは、2010年1月4日に、成田からパリに向けて飛び立った便で、日本人を含むビジネスクラスの5人の乗客が、4000ユーロ相当(当時約54万円)の現金が盗まれたと訴えた。
現金、クレジットカード、貴金属、高級時計
この便は、日本時間1月4日深夜に離陸し、パリ時間で1月5日早朝に到着する「深夜便」。就寝中の犯行を狙ったものとみられ、犯人が乗員・乗客の中にいるのは明らかだ。パリのシャルル・ドゴール空港着陸後、警察が乗客全員を「足止め」する形で約30分にわたって機内を調べたが、結局犯人は見つからないままだった。
だが、7月20日付けのフィガロ紙によると、フランスの警察はその直後の10年1月に捜査を開始。その結果容疑者として逮捕されたのが、エールフランスの47歳の客室乗務員の女だ。7月16日に成田からパリに戻ったところを、空港で身柄を拘束されたという。
10年に入って、同社のビジネスクラスでは少なくとも142件の盗難被害が報告されており、盗難の発生状況と乗務員のシフト表を付き合わせたところ、容疑者が捜査線上に浮上した。
容疑者は、26件の犯行を自供しているというが、捜査当局は数十件余罪があるものとみており、追及を進める方針だ。フィガロ紙によると、容疑者は主にパリとアジアを結ぶ路線のビジネスクラスに乗務。09年3月から犯行に及ぶようになり、乗客のポケットや手荷物から、現金、クレジットカード、貴金属、高級時計などを盗んだ疑いが持たれている。盗んだ現金もユーロ、日本円、スイスフランなど、多岐にわたるという。
「日本人が、格好の標的になっている」
また、日本人が主なターゲットにされた可能性もあるようで、捜査関係者は、同紙に対して
「クレジットカードで支払いをせず、大量の円・ユーロの現金を持っている日本人が、格好の標的になっている」
と警告している。
犯行の動機は「経済上の問題」だとされているが、容疑者が銀行で契約した貸金庫や自宅からは、貴金属、クレジットカード、現金、金額が書き込まれていない小切手、トラベラーズチェックなどが発見されたといい、本当に経済的に困窮していたのかは不明だ。捜査関係者は、
「銀行口座の残高(の多さ)が、容疑者の日頃のライフスタイルと、申告されている収入額との途方もないギャップを示している」
と嘆息している。
容疑者は、最高で懲役10年の刑を受ける可能性があるという。
エールフランス日本支社の広報担当者は
「(パリの)本社から『捜査中なので、エールフランスとしてはコメントできない』旨の連絡があった」
と話しており、現段階では「ノーコメント」との立場だ。