多機能携帯電話「アイフォーン(iPhone)4」に電波受信の問題が指摘された米アップル。総帥、スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が記者会見を開き、電話機を覆う「バンパー」という専用ケースを無料で配布して、対策にあたると説明した。
米消費者専門誌「コンシューマー・リポート(CR)」が「購入を推奨できない」と断じたうえで「電波障害はケースを使えば解決できる」としていた。アップルはCRなどの声を取り入れた形だが、会見でジョブズCEOは「電波障害はスマートフォン全体の問題」と強調。他社製品にも同じ問題があると説明した。やり玉に挙げられた競合他社からは、「ウチは関係ないだろう」と怒りの声があがっている。
他社製品使って問題指摘
「ご存知のとおり、我々アップルは完璧ではありませんし、電話機も完璧とはいえません」
米国時間2010年7月16日、カリフォルニア州のアップル本社で開かれた記者会見の冒頭、ジョブズCEOはこう切り出した。会見の主題は、アイフォーン4の電波受信障害。電話機側面の左下にある黒い線状部を握ると、電波の感度が低下してディスプレーに表示されるアンテナバーが減少する問題だ。
完璧ではない対象をアイフォーン4ではなく「電話機」と表現したのは意味がある。ジョブズCEOは、電波障害はアイフォーン4に限らずスマートフォン共通の問題だと位置づけたのだ。会見場には、ライバル社の製品でも同じ現象が起きることを「証明」する映像が流される。
最初に登場したのは、リサーチ・イン・モーション社(RIM)の「ブラックベリー」。電話機を握ると画面に表示されているアンテナバーの本数がどんどん減っていく。「まるでアイフォーンとそっくりな現象だ」とジョブズCEO。続く台湾HTCが製造するグーグル製のOS「アンドロイド」を搭載した機種や、韓国サムスン電子製の電話機も、握って数秒後にバーが減っていった。
改めてジョブズCEOは、「電話機は完璧ではない」と強調。その後は「アイフォーン4の返品率は1.7%」「アンテナ問題でカスタマーセンターに電話をかけてきたユーザーは0.55%」といったデータを出して製品の信頼性を語る。そのうえで「当社ではすべてのお客様にハッピーになってもらいたいから」と、無料でバンパーを配布することにした、と明言した。
確かに解決策は提示したジョブズCEOだが、最後も「スマートフォンには弱点がある」と言葉を強めて、電波障害はアイフォーン4固有の問題だとは言わなかった。
ネットでは「自社製品の欠陥誤魔化すな」
会見の内容に反発したのは、やり玉に挙げられたライバルたちだ。RIMの共同CEO、マイク・ラザリディス氏とジム・バルシリー氏は声明を発表。「アップル自身が犯した失態にRIMを巻き込むことは受け入れられない」とし、続けて「RIM製品に対するアップルの主張は、アンテナ設計問題に関する一般の人々の理解をゆがめ、アップルが直面している困難な状況から目をそらさせようとする意図的な企てに思える」と述べたと、米メディアが伝えている。
HTCやサムスン電子も同じだ。7月19日付けのウォールストリートジャーナル(電子版)によると、HTC幹部の発言として、「電波受信の問題は、スマートフォンに共通するものではないことは明らかだ」とし、ジョブズCEOの主張に反論。サムスン電子も、会見で引き合いに出された同社の携帯電話について「電波の感度が低下するという顧客からの重大なフィードバックは、これまで届いていない」と話しているという。
日本を含むアップルのウェブサイトには、これらメーカーのスマートフォンの写真が掲載され、電波受信に問題がある事例として説明材料にされている。ユーザーの反応はどうだろうか。「2ちゃんねる」を見ると、
「重要なのはこの不具合を直す気があるかどうかだ。他社がどうとか関係ない」
「自社製品の欠陥を誤魔化す為に他社製品巻き込むとか企業として最低だ」
と辛らつな声が多い。「問題はウチだけじゃない」と、「言い訳」に終始にしていると受け止められているのだろうか。この問題、まだ尾を引きそうだ。