鳩山由紀夫・前首相(63)が、「今期限りで政界引退」としていた方針をとりあえず撤回した。鳩山氏は首相退陣表明時に「次の総選挙に出馬致しません」と明言していたが、2011年春ごろに改めて結論を出す意向を表明した。首相在任時に「発言のブレ」を批判された鳩山氏だが、また迷走が始まったのだろうか。
鳩山氏は10年7月17日、地元の北海道苫小牧市であった後援会会合で、次期衆院選の立候補について、再検討して11年春の統一地方選のころを目安に結論を出すとの考えを示した。翌18日の室蘭市などであった会合でも、同様の発言を繰り返した。
首相就任前にも「進退」発言
7月17日の鳩山発言を受け、各新聞社は18日付朝刊で「引退撤回?」(毎日)、「引退表明ひとまず撤回」(読売)などと報じた。スポーツニッポン(ウェブ版)は、「鳩山前首相 『ブレ』衰えず…次期総選挙へ不出馬撤回?」と発言の「ブレ」を指摘した。
鳩山氏は、首相辞任を表明した6月2日、テレビカメラの前で「次の総選挙に出馬致しません」と明言していた。たとえば朝日新聞は翌3日付朝刊の1面(東京最終版)で「首相、今期限りで引退」と見出しを付けて報じた。さらに社説でも「首相は次の総選挙には立候補しない考えを表明した」と指摘して、「小沢氏もこの際、政界引退を考えるべきだ」と主張していた。
鳩山氏は「政界引退」を首相退陣時に突然言い始めたわけではない。政権交代前の09年夏の衆院選の直前、新潟県内の集会で「首相まで極めた人がその後、影響力を行使することが政治の混乱を招いている」と、自民党を念頭に批判を展開した。首相就任後に退陣すれば自身は次の選挙に立候補しないのか、との記者団の質問に対しても「基本的にはそのように考えている」と答えていた。
7月17、18日の鳩山発言は、「政界引退」発言をいったん後退させ、引退するのかしないのかの結論を「保留」した形に戻し、「11年春の統一地方選のころ」に結論を出す、というものだ。結局、従来の発言通り引退する可能性も残されているとも言えるし、「引退撤回」への批判を弱めるため時間かせぎをしているように見えなくもない。