胃がん予防のため、ピロリ菌除菌が注目されている。もともとピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者に多くみられ、除菌するには胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害剤と2種類の抗生物質を経口投与する「3剤療法」が一般的だ。
ところが、この療法による除菌率が低下してきている。除菌率の低下を食い止めようと、さまざまな研究が進められているなか、東海大学医学部の高木敦司教授は乳酸菌L.gasseriOLL2716(LG21乳酸菌)に着目し、これが除菌効果を高める作用があると報告した。
40歳以上になると感染率が上がる
ピロリ菌は、2.5~5ミクロン程度の大きさで、数本の細長い鞭毛をもち、これを素早く回転させることで胃粘膜を自在に動き回るという「厄介者」だ。1994年には世界保健機構(WHO)が発がん性物質の一つに認定している。
ピロリ菌の感染率は先進国で低く、発展途上国で高い傾向にあるが、日本人は例外的に高い。しかも高齢者ほど高く、60歳以上では80%近くの人が感染していると推測されている。世代でいえば、40歳以上の感染率も30歳代に比べて多いという結果が出ている。
なかでも胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者は多く、胃粘膜の炎症をベースに発症することが解明されている。ピロリ菌の感染率は、胃潰瘍で70~80%、十二指腸潰瘍では90~100%という。
また、これまでの研究でピロリ菌の感染者と感染していない人を追跡調査した結果、感染者からは胃がんの発症例がみられた(1246人中36人、2.9%)が、非感染者は一例もみられなかった。つまり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんなどの疾患リスクを低下させるにはピロリ菌除菌が有効だと考えられるわけだ。