参院選で大敗した菅首相がマスコミから総スカンを食らっている。「ぶら下がり取材」を巡る新聞・テレビ記者との対立が続いているだけでなく、これまで民主シンパで「応援組」とみられていた週刊誌や夕刊紙も態度を一変させている。
「菅居座りでニッポン破綻」。2010年7月11日投開票だった参院選後に出た週刊朝日の最新号(7月23日増大号)は、厳しい見出しを表紙に掲げた。6月上旬の菅内閣誕生時の6月18日号の表紙には、「(民主)単独過半数の勢い」「民主党革命 再スタート!」と期待を寄せていた扱いが一転した。この間、わずか約1か月だ。
「民主党へ投票を」から一転「バカな菅と小沢」
「もう一度民主党へ投票を」。こうはっきりと1面(6月30日発売号)で主張していた夕刊紙の日刊ゲンダイは、参院選後(7月12日発売号)にはこう変化した。「民主党政権に絶望した選挙民」「バカな菅と小沢に選挙民あきれる」――。
鳩山由紀夫・前首相からバトンタッチされた菅直人首相は、内閣支持率のV字回復をみせた。しかし、ほどなく消費税増税を巡る首相発言の変化などから支持率は下降を続けた。7月14日付朝刊でも、読売新聞が「内閣支持率急落38%」と報じた。7月上旬の前回調査では45%だった。約1か月前の発足直後は64%もあったにもかかわらず、だ。朝日新聞の14日付朝刊では、内閣支持率は「微減の37%」(7月上旬の前回は39%)だった。
こうした支持率低下に関連し、参院選期間中にマスコミに怒りをぶつけたのは仙谷由人官房長官だ。7月5日の会見で、消費税などを巡る世論調査結果について「メディア自身が消費税、財政、社会保障問題のポジションをちゃんと持って言ってもらった方がいい」と、「マスコミは無責任だ」と言わんばかりの批判を行った。メディアと菅内閣のギスギスした関係がうかがえる。
7月7日に菅首相が「民主党代表として」ぶら下がり取材に島根県内で応じた際には、毎日新聞は「首相は就任以来、ぶら下がり取材に慎重な姿勢をとり続けていたが、参院選の情勢が与党に厳しくなる中、方針転換したとみられる」と報じた。「都合のいい情報発信のやり方には批判が出そうだ」とも指摘している。
7月1日付の読売新聞も、朝のぶら下がり取材を受けない首相に対し、「報道陣からは『国民の関心の高い(サッカー)W杯についてだけコメントするのはずるい』との声が出ている」と伝えていた。ぶら下がり取材を巡り、記者団に不満がくすぶっていることが浮き彫りになっている。
「マスコミに不満があっても対応はすべきだ」
また、民主党大敗の情勢が鮮明になった7月12日未明にあった菅首相会見について報じた産経新聞は、「司会の衆院議員、菊田真紀子はニコニコ動画、ビデオニュース・ドットコムなどに優先して質問させ、幹事社の読売新聞を除くと新聞社に質問のチャンスはなかった」と恨み節を展開した。
どうしてこんなにギクシャクしているのか。ある大手新聞社の記者によると、「民主閣僚の度量のなさ、人間的魅力の乏しさが問題だ」という。自民党政権時代の総理を含む大臣たちは、良い悪いは別にして、一般的に「話術もあり、それなりの懐の深さが感じられた」。民主党大臣にはそれがなく、コミュニケーションを妨げているというわけらしい。
菅政権VSマスコミのギクシャクぶりを「元」与党の自民党関係者はどう見るのか。同党の平井卓也・広報戦略局長に話をきくと、「都合の良いときだけマスコミを利用しようとしても、与党では無理な話だ。民主党は野党時代の発想が抜けていない」と批判した。「権力を持っている」という自覚があれば、その権力をどう行使しているかについてマスコミを通じて国民に説明するのは「与党の義務」だ。
「たとえマスコミに不満があっても対応はすべきだ。自民党はしてきた。政権与党として民主党が甘いことは、こうしたことからも分かる」