電波受信障害の問題に揺れる米アップルの多機能携帯電話「アイフォーン(iPhone)4」が、新たに厳しい評価を突きつけられた。米「コンシューマー・リポート(CR)」誌が、アイフォーン4の電波受信をテストしたところ、実際に問題が発生。「購入を推奨できない」と断じたのだ。
CR誌は米国でも権威のある消費者情報誌。「ソフトウエアをアップデートすれば修正できる」とアップルは主張するが、CR誌はこれを疑問視しており、アイフォーン離れが起こる可能性も出てきた。
別の機種では「症状」出ない
アイフォーン4の電波障害は、2010年6月24日の発売直後から各種メディアで取り上げられた。電話機の側面下にある黒い線状の部分を覆うように持つと、電波の受信状態を示すアンテナバーの本数が急激に減り、最後は「圏外」になってしまうものだ。米アップルは、米国時間7月2日にウェブサイトで公式コメントを発表。この不具合は、表示するバーの数を計算するための数式に誤りがあったことによるものとして謝罪した。合わせて、改善のための無料ソフトアップデートを数週間以内に実施することを明らかにした。
この問題について、CR誌のエンジニアがニューヨークにある別々の販売店でアイフォーン4を3機購入、外部からの電波信号を遮断した部屋で、電波実験を行ったという。7月12日付けの同誌電子版では、動画で実験の様子を公開。機械を使ってアイフォーン4の電波受信状態を計測したところ、問題の「黒い線」を指で隠すと、測定器の画面に表示される電波信号の数値がみるみる下がる様子を映している。アイフォーン3GSほか別機種の携帯電話でも同様の検査をしたが、同じ「症状」は出なかったという。
CRは、「アップルがこのデザイン設計上の欠陥を改善するまでは購入を推奨できない」と断定。暫定的な解決策として、黒い線の部分にガムテープなどを張り付けると問題を軽減できるという。ただし、見た目にはとても不恰好だ。
CRのサイトには、ユーザーから多くの書き込みが寄せられている。「アップルよりCRの方が信頼できる」「電話機を手に持って通話できないなんでばかげてる」との声がある一方、「電波障害は全然起きない」と投稿した人もいた。
アップルは「アンテナ表示に問題」
米国の消費者団体専門誌として歴史あるCR誌は、消費者保護のために製品を公正に評価するのが目的だ。取り扱う品は自動車から電化製品、デジタル機器、家庭用品など幅広い。公平さと独立性を保つために、外部からの広告は一切掲載しないという徹底ぶりだ。読者にも影響力が強く、4月14日付けJ-CASTニュースが報じたように、最近ではトヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」のSUVについて「買うべきではない」と評価を下した。
アップルにとって痛いのは、同社の公式見解の内容に疑問符がつけられたことだ。アップルは「アンテナの表示に問題あり」と考えて、更新ソフトの配布で乗り切れると考えるようだ。だがCRは、実験結果からこの見解を疑わしいとして、アイフォーン4そのもののデザイン修正が必要だと結論づけている。
ITブログメデイア「ギズモード」(英語版)は、7月2日付けの記事で、複数の無線の専門家の話として、電波障害はアンテナバーの表示が問題なのではなく、受信そのものに不具合が発生しているのだとしている。そのうえで、電話機左側の黒い線部分を指で防ぐと通話中の声が途切れたり、ウェブサイトへアクセスしている最中の接続が止まったりする動画を掲載。実際に電波障害が起きていることを「証明」している。
八方ふさがりになりつつあるようなアップルだが、厳しい評価に対してどう乗り切るだろうか。