新党大地の鈴木宗男代表(62)が、歌手の松山千春氏(54)を衆院選北海道5区補選で民主党と共同推薦で擁立する構想をぶち上げた。松山氏は、鈴木代表が裁判で有罪(上告中)になる中で衆院選へ立候補し批判を受けたときも明確に支援していた「盟友」として知られる。
「町村(信孝・元官房長官=自民)さんが(補選に)出るなら、松山さんにお願いして、ひと勝負かけようと思っている」。鈴木代表は2010年7月12日、札幌市内で記者らとの囲み取材の中でこう話した。
「松山さんは大恩人」
5区(札幌市厚別区など)補選は、民主党の小林千代美・前議員が、北海道教組の違法献金事件に絡み6月に辞職したことを受け、10月24日に投開票される。5月末には、09年衆院選で小林前議員に敗れ比例で復活当選した町村元官房長官が、議員辞職した上で補選に立候補する考えを自民支部会合で明らかにしている。
それにしても、鈴木代表はなぜ松山氏の名前を挙げたのか。松山氏は、北海道出身で「長い夜」(1981年)の大ヒットなどで知られる。現在も北海道在住だ。
「松山さんは私の大恩人であります」。参院選の投開票が迫った10年7月4日、都内で民主党比例候補(新党大地推薦)の八代英太・元郵政相の街頭応援演説をしたさい、鈴木代表は、応援に駆けつけた松山氏についてこう触れた。
鈴木代表は現在、民主党と統一会派を組み衆院外務委員長を務めている。林野庁などを舞台にした汚職事件で、あっせん収賄などの罪で1審(04年)、2審(08年)ともに有罪と認定され、現在上告中だ。委員長就任を巡っては、自民党などから「(有罪が確定すれば)国会の権威を傷つける」と批判が出た。
04年の1審有罪判決後の05年8月、鈴木代表は地域新党「新党大地」の立ち上げを発表した。松山氏が命名した党名で、事務所開きには松山氏も同席した。05年9月の衆院選に、当時控訴中の鈴木代表が比例北海道ブロックから立候補すると、松山氏は「裁判で戦っている最中ですが、自分たちも潔白を信じ、精一杯応援させて頂きます」などと応援演説に立って支援を訴えた。09年8月の選挙でもその姿勢は変わらなかった。
「推薦の話全く聞いてない」
2人は、北海道足寄高校の先輩後輩の間柄だ。「千春は、鈴木先生の(1983年の)衆院初当選のときからずっと応援している」。足寄町の商工会関係者はこう話す。松山氏も政治に関心が強く、2人は結びつきを深めたようだという。
松山氏の立候補は実現するのか。「共同推薦」と名前を挙げられた民主党北海道の関係者は「全く聞いてない」と話した。小林前議員の辞職を受け、党内で候補擁立について検討を続けているが、松山氏の名前は挙がったことがないそうだ。新党大地の関係者も、「まだ鈴木代表の『思い』の段階で、具体化が進んでいる話ではない」と明かした。
一方、自民党北海道連関係者に「松山千春氏の知名度は町村元官房長官にとって脅威ではないか」と質問すると、「まだ確たる話ではないので……」とコメント対象外といった様子だった。「7月中にも候補擁立のめどをつけたい」という共産党北海道委員会も、松山氏擁立構想について「コメントする段階ではない」と素っ気なかった。
松山氏の所属事務所担当者に話を聞くと、7月12日の鈴木代表発言を報じた地元紙報道について松山氏本人に確認をとったところ、初耳だし気にも留めていない様子だったという。補選がある10月にはツアーが予定されているため、担当者は「立候補はありえません」と強調していた。