「毎日6分間聞くだけで、あなたの男性力は高まります」。ちょっと「怪しげ」な宣伝文句の商品は、アップルが運営するアプリケーション配信サービス「アップストア」で販売されているアプリだ。「アイフォーン(iPhone)」や「アイパッド(iPad)」向けにつくられた「男性向け性欲回復アプリ」だという。
説明を読んだだけでは、効果の医学的な根拠が不明。商品名も「セックスアップ」と少々どぎつい。このようないかがわしい、あるいは性的な内容を含んだりしたアプリは、アップルは審査で却下することもあるはずだ。だがアップストア内をのぞくと、意外と多くの「セクシー系アプリ」が削除されずに残っている。
バイアグラと同じ効能うたう
「セックスアップ」は、2010年5月29日にリリースされている。男性向けに「あなたの性欲を刺激します!」と、銘打ち、アイフォーンやアイパッドにダウンロードして、アプリから流れる特殊な音を聞くことで、減退していた性欲を取り戻すことができるという代物だ。毎日6分間、20日間続けて聞けば「男性力」は大きく改善、バイアグラを飲むのと同じだけの効果が得られるとうたう。
説明によるとこのアプリは、高周波のアルファ波をつくりだして脳波と連動させる。これにより脳が刺激されて男性ホルモンがつくられるという。男性ホルモンの分泌を促して精力アップにつなげる、ということらしいがそこまでは書いていない。
だが、根拠はいかにも頼りない。約580人の男性がこのアプリを試した結果、77%以上に有効だったと書かれているが、有効の度合いなど詳細はなく、医学的な裏づけや専門家による証明も掲載されていない。
価格が350円なので、「シャレ」のつもりで買うならいいが、脳に直接的な影響を及ぼすような記述を読むと、いささか心配だ。原稿執筆時点で購入者の評価は見られないが、ツイッターでは「どうやって(アップルの)審査通過したんだろ?」「効果もわからず怪しげ」「得体の知れない有料アプリ」といった投稿が並んでいる。
ポルノ欲しい人は「アンドロイド」買え
このような少々怪しげなアプリが、アップストアで販売されていることには疑問が残る。アイフォーンやアイパッド用のアプリを開発してアップストアで取り扱ってもらうには、アップルの事前審査を通らなければならない。アップルはわいせつな描写やポルノ、暴力、他人を中傷する内容を含むアプリを禁じており、開発者は「性描写やヌード」「酒やタバコ、麻薬の使用または記述」「リアルな暴力描写」など10項目について、コンテンツに登場する頻度を「なし」「一部」「頻繁」の中から選んで回答する。一つでも該当すれば即審査から落ちるわけではないようだが、却下理由として性描写を指摘されるケースもあるようだ。
アップルは2月、突然「セクシー系」アプリを大量に削除した。米アップルCEOのスティーブ・ジョブズ氏はたびたび「ポルノ排除」に言及。4月には、性的なコンテンツの取り扱いに関する顧客からの質問メールに対して、ジョブズ氏と見られる人物が「我々には、アイフォーンからポルノを除外する倫理上の責任があります。ポルノが欲しい人は(グーグルの)「アンドロイド」ケータイを買えばいいでしょう」と返信したと、複数の米メディアが伝えた。
さぞかし、厳格なルールが適応されているかと思うと、実はアイフォーンを使ってアップストアで「sex」と検索しただけで、アダルト物を思わせるアプリが続々と現れた。アプリの説明にも「成人向け、わいせつなテーマ」などと書かれている。アップルによると、6月22日時点でアップストア上のアプリの数は22万5000点以上。日に日に増えるアプリに「ポルノ規制」が追いつかないのか、野放し状態が続いているようだ。