「創価学会は、菅首相と仙谷官房長官が嫌い?」。NHK出身のキャスター、池上彰さん(59)が、テレビの選挙特番でこんな疑問を公明党代表にぶつけるなど、直言ぶりで人気だ。そのタブー破りとは――。
池上彰さんは、テレビに本にと忙しすぎたのか、口蹄疫被害のニュースで間違った解説をしてしまった。しかし、2010年7月11日の参院選では、そんなことも忘れさせるような、切れ味鋭い質問や解説を連発した。
谷亮子氏には、政治と柔道の両立を突く
舞台は、テレビ東京で11日夜に放送された「選挙スペシャル」だ。
「池上解説タブーなし」「宗教と選挙も解説」――。こう新聞のテレビ欄でうたったように、特番での池上さんは、初っぱなから直撃パンチだった。
たちあがれ日本から出馬した元巨人軍選手の中畑清氏には、こんな質問をぶつけてきた。
「そもそもですね、読売新聞の渡辺会長に呼ばれて、『こっから出ろ』と言われたという話がありますが、そうなんですか」
これには、いつもは笑顔の中畑さんも、さすがに焦った顔になった。「いえいえ」と必死に否定すると、出馬を相談した人として、野球の監督や政治評論家などの名を挙げた。
トップ当選の蓮舫行政刷新相であっても、ジャブを忘れない。
「一番でなきゃダメなんですか、というあの発言が結局、自民党が一番でなきゃダメなんです、一番一番、というスローガンに取られてしまいましたねえ」
すると、蓮舫氏は、苦虫を噛み潰したような表情に。「あのー、他党のことはよく分かりません」と答えるのが精一杯だった。
さらに、谷亮子氏に対しては、だれもが聞きたいと思うような政治と柔道との両立について切り込んだ。神妙な様子の谷氏に対し、池上さんは、国会の開会と柔道の大会が重なったとき、国会を優先するのか尋ねたのだ。
「創価学会は、菅首相と仙谷官房長官が嫌い?」
「当然そうです、はい」と谷氏から言質を取ると、今度は、どの委員会に所属したいか、具体的な専門性を突っ込んできた。これに対し、谷氏は、「国に力を、子どもたちに未来を」という基本姿勢などを挙げただけで、具体的な委員会名は出なかった。
解説では、組織票や政治と宗教をテーマに挙げた。他のテレビ局が触れないようなものだ。
組織では、日教組について、組合出身の輿石東民主党参院議員会長が出馬した山梨県を例に、組合の加入率が高い県は、組合と教育委員会は仲がよく、組合幹部が出世することもみられるとした。さらに、政党ごとに支持団体名を挙げ、自民党では、日本遺族会、日本看護連盟などが支持しているとした。
さらに、突っ込んだのは、政治と宗教の関係についてだ。
公明党候補の街頭演説には、多くの創価学会員が集まるとして、集まった人に「会員の方ですか」と聞いて回る場面も放送された。そして、同党の山口那津男代表への質問では、学会が菅氏や仙谷氏を嫌っているから民主党と連立しないという声があることを単刀直入に聞いた。これに対し、山口代表は、政教分離を理由に、全面否定するだけだった。
また、浄土真宗などのケースを挙げたほか、スナック・クラブ票やお笑い票なども解説していた。
ネット上では、こうした解説は選挙前にやるべきなどの声もあったが、「池上さんぱねぇ(半端じゃない)」などと称賛の声も相次いでいる。
識者にも、好評のようだ。芸能評論家の肥留間正明さんは、日刊ゲンダイのコラムで、他局と比べて「わかりやすさ、フレッシュさで圧勝」とした。デーブ・スペクターさんは、東スポのインタビューに、視聴者をバカにしているとも取れるものの、独自色を出す意気込みが感じられた、と話した。ちなみに、選挙特番の視聴率は、民放では、日テレに次いで2位だった。