「速やかに提出」と文書送付
郵政法案については、「本音では賛成という自民議員もいる」と切り崩しの可能性を示唆する政府関係者もいるが、民主の方でも一枚岩とは言えない状況だ。
そもそも10年3月の段階では、国民新党の亀井静香代表と現総理の菅直人財務相(当時)は、方向性を巡り対立していた。しかし、参院選を控え「郵政票」を味方につけるために、鳩山由紀夫首相・小沢一郎幹事長(いずれも当時)コンビが亀井氏に配慮した形で現法案への道筋をつけた経緯がある。
それにしても、「国民新は、郵政票を基礎に(比例)200万票で2人当選が目標」(時事通信)でありながら、1議席も獲得できなかったのはなぜか。同党の比例獲得票は約100万票で、比例で1議席を確保した新党改革の約117万票と比べると、あと1歩だったとは言えそうだが。
国民新の有力支持団体は、全国郵便局長会(全特、約2万人)と政治団体、郵政政策研究会だ。同研究会に数度にわたり電話をしてみたが、「担当者が出かけている」「担当者は戻ってきたが今ははずしている」「今日はバタバタしている」という回答ばかりだった。
国民新党公認だったある陣営に電話をし、「郵政票は思うように集まったのか」と質問すると、「そんなこと分からない」「分かる人なんているのか」と不機嫌そうに男性が答えた。
選挙期間中の7月7日には、枝野幸男・民主党幹事長名で、全特へ「9月に最重要法案として(郵政法案を)速やかに成立させる」とする「宣誓書」もどきの文書を送るという一幕もあった。民主内で郵政法案の先送り論が出ている、との報道に対して全特側が不信感をもったのを静めようとの狙いだった。民主と国民新と「郵政票」の間には、投開票前からすきま風が吹いていたようだ。