ドイツの予言タコが「大炎上」している。サッカー・ワールドカップ(W杯)でドイツの敗北を見事的中させてしまい、ネット上で「パエリアに入れてしまえ」などと攻撃を受けている。水槽の中で「予言」をする動画は各国で人気となり、日本でも注目を集めている。また、日本のタコにも「予言」は可能ではないか、との説も出てきた。
「本日金曜パウルはまた予言する」。ドイツの水族館シーライフ淡水・海水水族館イン・オーバーハウゼンのサイトを見るとこんな予告が載っていた。
日本時間2010年7月9日夕、3位決定戦を控えるドイツの勝敗を予想する前打ちだ。パウルは、W杯で予選から準決勝までのドイツの6試合すべての勝敗を当てている話題の予言タコだ。08年のサッカー欧州選手権でも8割の的中率だった。
箱のフタあけエサをとる
「(タコは)何の気なしに(箱に)入ってるんだろうな」。7月9日の情報番組「スッキリ!!」(日本テレビ系)で、司会の加藤浩次さんはこうつぶやいた。パウルが、ドイツとスペインの両国旗がそれぞれ表示されている透明な2つの箱のうち、スペインの方の箱のふたをあけ、中のえさを取り、「スペイン勝利を予言」した映像を見ての感想だ。
「こりゃあ参院選の予想もやってほしい」。パウルの活躍は2ちゃんねるでも多くのスレッドが立つなど話題となっている。ユーチューブでも再生7000回を超えるパウル動画もある。
日本の反応は、「面白い」「偶然だろ」といったものが多いが、「当事者」となったドイツとスペインではその反応が熱を帯びている。
ドイツ語版のユーチューブをみると、パウル動画の再生数は15万超や8万超などの動画がいくつも並んでいた。「切り刻んでサラダに」などとネットで書き込まれているパウル。動画についたドイツ語コメントには、「もうお前は長くない」「もうすぐオレの皿の上だ」「パウルを食べるレシピを教えてくれ」といった恨み節が並んでいた。ニュース記事でも「ネット上で死の脅迫」「水族館はパウルを保護することを約束」などと多数報じられている。
「人為的にどちらかの箱を選ばせることは可能」
一方、スペインでは、サパテロ首相が試合後、現地ラジオ局の取材に「(タコの安全が)心配だ。(食べられないよう)保護チームを派遣しようかと考えている」と発言するなど「国際問題化」している。「タコは今後食べない」との宣言がネットに登場し、中にはタコを出すのを止めた店も出たとの報道もある。
それにしても、タコがエサを目当てにフタを開けることなどできるのだろうか。以前、特別展「タコの能力」などに携わったことがあるアクアワールド茨城県大洗水族館の50代の担当者に聞いてみた。
「訓練すれば可能ですよ。好奇心の強いタコなら2週間ぐらいでできるでしょうか」
透明な瓶の中にエサを入れ、最初は穴があいたフタを使うと、タコは視覚と嗅覚を使ってエサに気付く。フタも簡単にあくようにしておき、次第に少しずつ難しくする。中には、緩くしめた回転ネジ式のフタをあけることができるようになるタコもいたそうだ。慣れてくるとフタに穴をあけなくてもエサを狙うようになる。
では、パウルのように「予言」もできるのだろうか。この担当者は「できないでしょうね」と言下に否定した。「疑うわけではないですが、臭い用の穴やエサの好みの差などを利用すれば、人為的にどちらかの箱を選ばせることは可能ですね」と指摘した上で、「でもそんなことを言っては夢がないと怒られるかもしれません」と話していた。
パウルは7月9日夕(日本時間)、3位決定戦のドイツ―ウルグアイ戦はドイツ勝利、と「予言」した。