中国の人民元建て預金に注目が集まっている。中国政府が「人民元レートの弾力性を高める」方針を発表して1か月。人民元の上昇期待が高まる中で、円安元高が進めば、預金金利に加えて為替差益も得られるためだ。
2009年12月からは、東京・赤坂などにある中国銀行(Bank of China)が取り扱いを開始。普通預金と期間1、3、6か月と1年の定期預金を用意していて、誰でも口座が開けるようになったことも「追い風」になっている。
口座開設サポートに問い合わせ数百件
人民元建て預金をつくるにはこれまで、実際に中国に行って、現地の金融機関で口座を開設するしかなかった。それが国内でも可能になり、中国銀行・東京支店は「預金を希望する人が、最近多くなっているように見受けられます」と話している。
一方、香港上海銀行を傘下にもつHSBCも、東京・赤坂など国内7か所にある「HSBCプレミア」センターで2010年5月から、中国の口座開設サポートサービスを開始している。1000万円以上の預金者を対象に、専門スタッフが利用者のニーズや目的などに合わせて、「中国HSBCプレミア」センターの約70か所の中から選んで口座を開設してくれる。
HSBCは、「5月のサービス開始時には1日数百件の問い合わせがあり、コールセンターの要員だけではすまなくなったほどでした」と、人民元の人気に驚いている。
人民元建て預金は外貨預金だから、為替リスクがある。いま人民元建てで預金すれば、日本の銀行よりも高い金利収入を得られるだけでなく、将来の「円安元高」による為替差益も得られると考えられている。
金利は1年物で2.25%程度と日本とは段違い
人民元建てで預金すれば、金利は1年物で2.25%程度。これが日本の銀行では、1年物が0.06%前後と1%にも満たない。さらに、為替差益の「恩恵」に授かれるかもしれないのだから、資金運用先としての人民元は魅力だ。
上海など海外で個人の預金口座を開設する人向けに「人民元預金口座開設サポートサービス」を実施しているベールネットによると、個人の預金口座の開設は香港などからも増えていることもあって、「中国当局の指導で、本人確認が厳しくなりました」と話す。
以前可能だった口座開設の代行サービスも、現地での本人確認が求められるようになり、同社は2010年1月から「香港・上海口座開設アテンドサービス」に切り替えた。口座開設の希望者には、現地で金融機関を紹介する。
ただ、利用は増えていて、同社への問い合わせも月間100件前後に上る。最近は、百度(バイドゥ)や淘宝網(タオバオ)などのインターネットショッピングやオークションでの元建て決済口座としての利用や、銀聯カードの普及によって日本国内でのショッピングや提携ATMでの現金の引き出しが可能になったことで、利便性も増している。「ビジネス利用だけでなく、個人の方がさまざまな理由で口座を開設しています」(ベールネット)と、注目度は増している。