鮮度のいい、刺身用のサバはいまや高級魚だ。養殖も盛んで、九州から都内に運ばれ、高級料亭や寿司屋に出荷されている。
大衆魚のサバは東京・築地市場では1キログラムあたり210円から840円で取引され、スーパーマーケットなどに流通している。一方、都内の料亭や寿司屋で見かける刺身用のサバは一本釣りで漁獲量が少なく、高級魚として扱われている。最近は、刺身用サバの養殖が九州で盛んだ。
脂のりがよく、鮮度がいい
鹿児島県長島町茅屋地区の漁業関係者が「海峡お魚育成グループ」を2001年に立ち上げ、サバの養殖を始めた。きっかけは、豊富に捕れていたマイワシが10数年前から不漁になったこと。冬場の収入も激減し、模索の結果、サバの養殖を始めることにした。養殖が可能な海域があり、地区内のまき網漁業者から「稚魚」を低価格で安定して確保できるからだ。
出荷量は徐々に増え、05年度は4万5000尾を出荷した。近年は「稚魚」が手に入りにくくなり、ここ数年の出荷量は減ったが、年間3万尾で安定して推移している。
養殖サバにはマサバとゴマサバがあり、「萬サバ」というブランド名で売り出している。卸値は1匹(550~750グラム)あたり750~450円。北薩地域振興局の担当者によると「脂のりがよく、鮮度がいいのが売り」で、鹿児島県内の大手寿司チェーンや、料理屋に卸している。全国展開については、「稚魚の確保次第」という。
大分県佐伯市でもサバの養殖が行われている。地元ではサバの刺身を食べる習慣が昔からある。ただ、まき網漁業で捕るサバは鮮度を保ったまま遠方に運ぶことができず、関東では刺身を食べることが難しかった。
1本1600円で取引されている
大分県佐賀関で水揚げされる「関サバ」(マサバ)の人気が出たことをきっかけに、10年前から養殖を始める業者が出てきた。大分県漁協によると、「源サバ」(マサバ)のブランド名で関東方面の高級料亭や寿司屋にも出荷され、1本(800グラム)あたり1600円で取引されている。
農林水産業者・団体で最高位のコンクールとされる農林水産祭・水産の部で、最高賞に次ぐ内閣総理大臣賞に選ばれた養殖サバもある。宮崎県延岡市北浦町で養殖されている「ひむか本サバ」で、2008年10月に受賞した。
ひむか本サバの基準は厳しく、天然の稚魚を湾内のいけすで無投薬養殖(抗生物質など一切の薬品を使用しない)し、出荷前に餌止め(7日以上)を行い、胃内容物を完全に除去し、肉質を安定させた400グラム以上のマサバと決められている。
農林水産省が発表している「漁業・養殖業生産統計年報」によると、サバ類の09年漁獲量は47万トンだった。ピーク時の1978年の29%程度で、養殖が盛んな背景にはサバの漁獲量が落ち込んでいることもあるようだ。