択捉島で異例のロシア「軍事演習」 北方領土返還問題に強硬姿勢

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   ロシアが極東シベリアで行っている軍事演習をめぐり、にわかに緊迫感が高まりつつある。この軍事演習は、2010年にロシアが行うものとしては最大規模で、メドべージェフ大統領も視察した。北方領土にある演習場でも射撃訓練が行われたことが発表され、日本側は反発している。この狙いはどこにあるのか。

   問題になっているのは、6月29日から行われている軍事演習「ボストーク(東)2010」。兵士2万人、地上兵器2万5000点、航空機70機、船舶30隻が投入されるという大規模なものだ。

100媒体・300人の記者が軍事演習取材に参加

   黒海の艦隊も、はるばる極東まで遠征する。ロシア軍は08年からスリム化や即応力の向上などの組織改革を進めており、今回の演習で、改革が実際に進んでいるかを評価するねらいもある。

   7月4日には、メドべージェフ大統領がウラジオストクを訪問し、演習の様子を船の上から視察している。

   ロシア国防省の発表によると、100媒体・300人の記者が、軍事演習の取材に参加。国営RIAノーボスチ通信では、ウェブサイトに特設コーナーまで作られており、ロシア国内での扱いは、決して小さくないようだ。

   さらに、かつては「モスクワ放送」として知られた国営国際放送の「ロシアの声」が7月6日に伝えたところによると、オレグ・サリュコフ極東軍管区司令官は、

「極東軍管区所属の部隊の動きは、それぞれの部隊で、軍事的課題遂行に向けた動きが整っていることを示すものとなった。戦略的攻撃の演習では、ロシア軍が積極的な軍事行動を行い、砲撃・射撃能力を持ち、いかなる組織の中でも、機動的に共同行動を取ることができることが確認された」

と、極東地域での演習が順調に進んでいることの意義を強調した。

   日本の目と鼻の先で軍事演習が行われること自体、「地域の緊張を高める」という見方もあるが、岡田克也外相は、7月2日の会見で、

「そのこと自身がけしからんとか、問題があると言うつもりはない」

と、演習そのものについては問題視しない考えを表明。だが、国防省の機関紙「赤星」は、択捉島のオクチャブリスキー演習場でも演習が予定されていることを伝えている。岡田外相は

「北方4島に対する我が国の法的立場にかんがみて、とうてい受け(入れ)られない」

と、クギをさした。

「今までになかったことで極めて遺憾」

   ところが、ロシア国防省は、オクチャブリスキー演習場で演習を行った事実を7月4日付けで発表。兵士1500人と200の軍用・特殊車両が投入され、武装グループを捜索して実弾で撃破するという内容だ。北方領土での軍事演習を、ロシア側が発表するのはきわめて異例だ。

   これには、ロシア側の北方領土問題に対する強硬姿勢が表れているとの見方もある。ロシアは10年2月、国防の基本指針を示した「軍事ドクトリン」を10年ぶりに改定。ドクトリンでは、「ロシアおよび同盟諸国への領土要求」を、脅威として挙げている。

   国営イタル・タス通信が7月4日に伝えたところによると、ロシア外務省筋は

「ロシアには演習の場所を選ぶ権利がある」

と岡田外相発言に反発しているし、ニコライ・マカロフ連邦軍参謀総長も、演習は特定の実在する国をターゲットにしたものではないと断ってはいるものの、その目的を「極東の国境地域で、仮想敵国から国益を守ることを保障すること」と説明。日本を念頭においていることを示唆している。

   つまり、一連の日本側の主張が、ロシアに対する脅威のひとつとして受け止められているとの見方だ。

   岡田外相は7月6日、記者団に対して

「今までになかったことで極めて遺憾」

と話し、ロシア側に抗議したことを明らかにしている。

   一方のロシア側では、第2次大戦での「対日戦勝記念日」が近く公式記念日に格上げされる見通しで、今回の演習とあわせて、急速に態度を硬化させている。

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