「エコカー」といえばトヨタの「プリウス」に代表されるハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)に注目が集まりがちだが、「アイドリングストップ車」が「第3のエコカー」として名乗りを上げている。日本ではマツダが積極的に採用、他のメーカーも追随しはじめた。ガソリン車でありながら低燃費で、販売価格もリーズナブルとあって、急速に普及する兆しを見せている。
欧州で先行するアイドリングストップ車
環境意識が高いことで知られるドイツなど欧州では、アイドリングストップ車が「エコカー」の代表格になっている。
欧州では1999年にフォルクスワーゲンがアイドリングストップ車を市場に投入するなど先行したが、このときはあまり売れなかった。それが近年のエコブームもあって、2007年にBMWが1シリーズに導入。08年にはメルセデスベンツが、アイドリングストップ機能を標準搭載した小型車「Smart For Two mhd(スマート・フォーツー)」を発売した。スマート・フォーツーはすでに、08年12月に日本市場にも投入されている。
09年にはアウディも「スタート&ストップ」機能と名付けて参入。続々とアイドリングストップ車が登場している。
矢野経済研究所の調査(2009年9~11月に実施)によると、世界的に乗用車の販売が落ち込むなか、アイドリングストップ車は急増しており、2009年の世界販売台数は約90万4000台、市場規模で136億8000万円を見込んでいる。
なかでも欧州市場はその大半を占め、約88万1000台が走っている。欧州では今後、CO2の排出規制や、CO2排出量を基準とした自動車税制への移行によって、アイドリングストップ車は一層普及すると見込まれている。
将来はどのクルマにも標準装備される
日本のアイドリングストップ市場は欧州に次ぐ規模で、約1万8000台(矢野経済研究所調べ)。その先頭を走るのがマツダだ。同社は2009年6月に、独自の「i‐stop」技術を搭載した「アクセラ」を投入。10年7月からはファミリー向けの「プレマシー」にも搭載し、販売を開始した。
アイドリングストップ技術の優れているところは、比較的低コストで開発できる点にある。エンジン周りの改良で済むため、搭載する車種を増やすことができ、かつユーザーに安価で提供できるのがメリットだ。
早稲田大学大学院・環境・エネルギー研究科の大聖泰弘教授は、「アイドリングストップ技術は、将来的にどのクルマにも標準装備されるでしょう」と話す。
矢野経済研究所の調べでも、アイドリングストップ車の世界販売台数は2015年に1043万台に達するとみている。この数値は09年に比べて、じつに11.5倍もの伸びだが、標準装備になればその可能性は高いとみられる。
大聖教授は、「自動車メーカー各社がガソリン車の燃費向上に取り組むなかで、アイドリングストップ技術がさらなる低燃費車への第一歩になるのではないか」と期待する。
日本の自動車メーカーも、マツダだけでなく、トヨタが「ヴィッツ」、ダイハツが「ミラ」の一部にアイドリングストップ技術を搭載。ホンダも搭載車を販売、伊東孝紳社長は「今後、当たり前の技術になる」と話し、より積極的に取り組む姿勢を示している。日産自動車も今後、「マーチ」や「セレナ」への搭載を予定している。
アイドリングストップ機能が、さまざまな車種に標準装備される日は、そう遠くない。