「消費税増税反対!」。民主党執行部が増税論議を提唱する中で、こんなキャッチフレーズを声高に訴える候補者が出てきた。小沢系候補を中心に党執行部との温度差が表面化しており、有権者に混乱を与えかねない事態だ。
選挙戦で消費税反対と唱えているのは、小沢ガールズの一人とされるタレントの岡部まり氏(50)だ。
中部選挙区で13人中5人「必要ない」
岡部氏は、出馬した大阪選挙区で、「探偵!ナイトスクープ」出演時代の知名度を生かし、街頭で無党派層を中心にアピールしている。日刊スポーツの2010年7月5日付記事によると、ここに来て、こう訴えるようになったというのだ。
「消費税増税反対! 夫婦別姓反対! 大阪の人の生の声を国政に届ける役をしたい」
民主党は、夫婦別姓にも前向きと報じられており、岡部氏は、党の2つの基本方針に反対とも受け止められる。
消費税については、小沢一郎前幹事長が、菅直人首相の「前向き発言」を批判。その後、内閣支持率が下がるにつれ、小沢系の議員を中心に反発が広がっている。
中日新聞の5日付記事によると、中部9県の選挙区では、民主候補13人のうち5人もが増税を「必要ない」と回答した。また、それ以外の選挙区でも、「安易な増税はすべきでない」「消費税は5~6年先の問題」などと消極的な候補者も多いようだ。
これに対し、菅首相は、4日の街頭演説で、消費税について「与野党を超えて話し合おう」と呼びかけるなど防戦に躍起だ。枝野幸男幹事長ら執行部は、小沢氏に反論するなどしており、民主党が分裂している印象すらある。スポニチによると、菅首相は大阪選挙区では、民主党2人目の候補で現職の尾立源幸氏(46)ばかり持ち上げ、岡部氏には一言触れただけだったという。
「党の考え方と大幅に違っていない」
菅首相ら民主党執行部の考えについて、各候補者は、どう考えるか。
岡部まり氏の選挙事務所に取材すると、スタッフはこう説明した。
「菅さんも、今すぐに消費税を上げるとは言っていません。執行部に反対していることにはなりませんし、何も言ってきていませんよ。出馬会見に小沢さんが同席したのは幹事長だったからで、岡部が『小沢ガールズ』だとは考えてないですね」
ただ、菅首相の消費税「前向き発言」については、本音も漏らした。「えらいこっちゃな。あんなこと、言いはるかな。有権者は敏感なんですから」
増税反対と唱えたのは、マスコミや野党が勝手に争点化したため、「やることをせなあかん。今すぐに上げるのは反対。あくまで最後の手段で」と言いたかったからだという。
小沢系に限らず、ほかの候補者も、消費税争点化には戸惑っている様子だ。
同じ大阪選挙区から出馬した尾立源幸氏陣営でも、取材に対し、選挙事務所秘書がこう明かした。
「事業仕分け人の一人として、税金のムダを撲滅することに専念しており、まずその使い道を明らかにしないといけません。そのうえで、財源不足なら消費税の議論をするべきです。賛成も反対もしておらず、増税論議はこれからだと考えています。菅さんも、議論するとしか言っていないと思います」
岡部氏が消費税反対と唱えるなどしていることについて、民主党本部の報道担当者は、こう話す。
「ご本人の考え方だと思いますが、党の考え方と大幅に違っているわけではありません。菅代表が申し上げている通り、消費税を上げるときは、国民の判断を仰ぎます。次の衆院選までには税制の協議を始めるということですので、街頭演説などがマニフェストに沿っていないということはないと考えています」