参院選を前に民主党政権が証券取引所などの大幅再編を促す「総合取引所」構想を打ち出したことが、市場関係者に波紋を広げている。早くも大阪証券取引所が東京工業品取引所(東工取)に統合を打診したと一部で報じられ、金融と商品の取引市場を統合する総合取引所が日本でも現実味を帯び始めたからだ。
報道を受け、大証は「決定した事実はない」と否定のコメントを発表したが、関係者の間では大証が東京証券取引所に先手を打つ形で、東工取を取り込もうと動き出したとの見方がもっぱらだ。
経産省は商品取引所の地盤沈下に危機感
総合取引所構想は、「強い経済」を目指す菅直人首相が、参院選を前にまとめた新成長戦略のひとつ。株式などを取引する証券取引所と、原油や穀物など幅広い商品を取引する商品取引所の垣根を取り払い、アジアの一大金融センターとなる総合的な取引所を2013年度までに創設しようという内容だ。
例えば、国内の証券取引所としては東証や大証などが広く知られているが、商品取引所は国内に4取引所(東京工業品取引所、東京穀物商品取引所、中部大阪商品取引所、関西商品取引所)がある。一般には馴染みが薄いが、この中で最も取引量が大きい東工取は原油やガソリン、金や白金、ゴムなど幅広い商品を扱い、出来高は世界でも04年3位、09年は10位と、上位にランクされる。つまり、国内で総合取引所を実現するとすれば、現実的には東証もしくは大証が東工取を奪い合う構図にならざるを得ない。
証券取引所の監督官庁は金融庁だが、商品取引所は経済産業省だ。このうち、経産省は国内4商品取引所の地盤沈下に危機感を抱いており、東工取と東証の連携強化に積極的だ。金融庁もアジアの金融センターとして東京を活性化させるには、東証を統合の核とするのは不可欠と考えている。
それを快く思っていないのが大証にほかならない。東証に大きく水をあけられているものの、証券取引所として国内2位の大証が生き残るには、東証との差別化を図るしかない。そのためには東工取に早期にアプローチを図るのは戦略上、必須といえる。