ニューヨークのホットドッグ早食い大会で、元チャンピオンの小林尊(たける)さん(32)が会場で現地警察に逮捕された。小林さんは大会前、ブログなどで契約を巡るトラブルを公表しており、今回は不参加で当初は観客席にいた。いったい何が起きたのか。
早食いの試合が終わり、小林さんは壇上に上がった。体を少しかがめながら前方の観客数人と右手をタッチさせていた。すると制服姿の警官や警備員らが取り押さえようと近づいてきた。小林さんは抵抗する素振りを見せ、警官の1人は小林さんの首を太い左腕で巻き付けて制そうとした――こうした場面を撮影したAP通信などの映像がユーチューブに流れている。
契約厳し過ぎる、と署名せず不参加
米独立記念日の2010年7月4日(現地時間)、恒例のホットドッグ早食い大会がニューヨークであった。観客席で試合を見守っていた小林さんは、試合後に壇上に上がった直後に取り押さえられた。米テレビ局CNN(ウェブ版)によると、逮捕容疑は「侵入禁止違反と逮捕に抵抗し警官の職務を妨害した軽犯罪」だ。
小林さんは、「フードファイター」として国内外で有名で、同ホットドッグ早食い大会では、01年から06年まで6連覇を達成している。身長173センチと大柄ではなく、体型もスリムだという意外性もあり、米国でも「TSUNAMI(ツナミ)」の愛称で親しまれている。07年にあごの故障で米国のジョーイ・チェスナットさんに敗れて以降、08、09年もチェスナットさんに敗北している。チェスナットさんは今回10年も優勝(10分間で54個)した。
10年1月からは、小林さんは拠点をニューヨークへ移し、労働査証(ビザ)も取得するなど米での本格的な「フードファイト」活動を始めているところだった。
「速報! 小林は今回のホットドック・イーティング大会への出場の予定はありません」。大会を主催する米ホットドック・チェーン「ネイサンズ」の英語サイトには、大会が終わった7月5日にも「緊急告知」が掲載されたままになっていた。小林さんは今回、大会運営団体側からの契約条項が厳し過ぎる、として署名に応じず大会へ出場しなかった。
許可なくテレビ出演もできなくなる
小林さんが大会前日に書いたブログ(7月3日)によると、求められた「契約」は次のようなものだったという。「これまで以上に厳しい契約書」で、サインすると「メディアの前でホットドッグを食べることができませんし、彼らの許可なくテレビに出演して、早く食べるパフォーマンスを披露することもできません」。
また、同大会への出場者の中には「それが可能な人もいる」が、「僕の契約書では不可能になっています」ともしており、「僕の優勝や、出場自体を拒んでいるようにさえ思ってしまう」と激しく反発している。
一方、大会を運営する団体「メジャー・リーグ・イーティング」は、CNN(ウェブ版、7月5日)に対し、「我々もファンも彼の出場を望んでいた」と小林さんの説得に全力を挙げていたことを強調し、「(逮捕は)不運なことだ」とコメントした。また、「NYデイリー・ニュースコム」(7月4日)によると、「主催者側」は、「契約書は以前の年と変わっていない。なぜ小林氏が契約を躊躇するのか理解できない」と答えており、小林さんの主張とは全く異なる内容となっている。
ネイサンズとメジャー・リーグ・イーティングのサイトには、7月5日現在、小林さんの逮捕に関する記述は見当たらない。
AP通信の逮捕映像では、米国のジョーイさんが優勝した後、小林さんが取り押さえられる場面では、小林さんに向けられたものかどうかは不明だが、「USA、USA」の連呼も響いていた。