テレビに書籍と日本で一大ブーム ハーバード大の講義「正義」授業の魅力

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難解なテーマだからインパクト強い

   5月には、講義内容を基にした書籍が出版された。都内の書店でも「コーナー」ができるほどで、初版からわずか1か月で20版を数える。出版元の早川書房編集部の担当者は、政治不信や長引く不況で日本社会に閉そく感が漂う中、「小手先ではなく、モノの考え方を根本から見直そうという人が増え、哲学や正義というトピックに魅力を感じたのではないでしょうか」という。

   サンデル教授と十数年の交流がある千葉大学法経学部の小林正弥教授は、サンデルの本がここまでヒットしたのは、テレビで講義のビビッドな討論が放映され、視聴者に強く印象付けたことが影響したと見る。教授と学生が対話しながら授業を進めるスタイルは、日本の大学では新鮮だが米国では珍しいとは言えない。だが、「命や徴兵制、生殖医療といった哲学的深みのあるテーマを、誰もが真剣に議論していることにインパクトがあるのでしょう」。政治や社会が混乱する日本で、サンデル教授の授業内容に共感し、難解なテーマを必死に理解しようとする人が増えたのではと小林教授は考える。

   8月にはサンデル教授が来日し、一般参加者を招いてハーバード大さながらの「特別講義」が開かれる。「サンデルブーム」はこのまま続くだろうか。小林教授は、今後ある程度は落ち着きつつも、確実にサンデル教授の「教え」は残るだろうという。「今回、サンデル教授の考えに触れた知識層に定着すると思います。政治家や法律家といった人たちに根付くことで、日本社会全体にも広がっていくでしょう」

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