菅直人首相が議論から逃げている、いや逃げてない――参院選中盤を迎え、野党と民主党が「菅隠し」の有無を巡り火花を散らせている。
「党首討論を逃げようとする姿勢は、政権党の党首としての責任を放棄するものと言わざるを得ない」。自民、公明、共産、みんなの野党4党の国対委員長は2010年6月30日、連名で「できるだけ多くのテレビ各局に出演し、党首討論を行うよう強く求める」申し入れを民主党に行った。
「W杯だけコメントはずるい」
申し入れについて、公明党の漆原良夫・国対委員長は「民主党は、首相の出番を少なくしてボロが出ないようにしていると聞く。姑息な『菅隠しだ』」と会見で批判した。
翌7月1日付の新聞朝刊では、「首相 党首討論 逃げないで 野党が申し入れ書」(読売)、「野党4党『逃げるな菅』」(産経)などの見出し(東京最終版)が並んだ。
読売新聞によると、仙谷由人官房長官が「(他党から番組で)1対8で批判を受ける」と述べるなど、政府・民主党では、党首討論への首相出席について「消極的な意見が出ている」。
また、読売新聞は同じ記事の中で、朝のぶら下がり取材への菅首相の対応も批判している。就任以来、「朝の取材」には応じて来なかった菅首相が、6月30日午前には、サッカーのワールドカップ(W杯)での日本代表の活躍について、記者団の質問に答えた。「残念だったけど、本当によく頑張った」。読売記事は「報道陣からは『国民の関心の高いW杯についてだけコメントするのはずるい』との声が出ている」と指摘している。
過去の首相たちは、選挙期間中のテレビ党首討論へ出席していたのだろうか。自民党報道局によると、手元に資料がある09年夏の衆院選時には、麻生太郎首相(当時、以下同)は「6局全局の党首討論に参加した」。また、正式な資料は手元にないが、07年参院選時の安倍晋三首相のときも「局側から要請があった党首討論は断っていない。最初から単独出演要請だったケースはあったが」としている。
NHKとフジテレビは「ほぼ決定」
ある野党広報関係者は、「民主党から『党首討論ではなく、首相単独出演にできないか』と要請を受けた民放もあり、マスコミ関係者も『議論から逃げるのか』と怒ってますよ」と話した。
一方、民主党の安住淳選対委員長は、「菅首相が党首討論から逃げている」との野党の指摘について、「事実無根、笑止千万だ」と批判した。「(首相は)どこでも出て行く。各局と調整している段階だ」と、「議論から逃げている」論を全否定した。
民主党報道担当によると、7月4日(日曜)にNHKとフジテレビでの党首討論に菅首相が参加することが「ほぼ決定」している。「ほぼ決定」したのは、6月30日の野党要求より前のことで、他局とも日程調整中としている。ある民主党関係者は「野党も一部のマスコミも何をもって議論から逃げている、などと言うのか。全く逃げていませんよ」と怒りを露わにしていた。