独立行政法人や国立大学法人の6割が海外出張で基準外のビジネスクラス利用を認めていたことが、財務省の調べで分かった。事業仕分けなどを通じて、今後広くメスを入れる必要がありそうだ。
「出張はビジネスクラス利用が基本とは、暮らしに苦しむ国民がどう見ていると思うか!」
2法人は役員以外の幹部と一般職員にファースト認める
政府の事業仕分けが行われた2009年11月24日。東京新聞によると、会場には、こうした怒号に近い声が上がった。標的となったのは、外務省所管の独立行政法人「国際協力機構(JICA)」だ。
今度は、別の問題として、独法と国立大学法人の6割で、09年度に基準外のビジネスクラス利用が浸透していたというのだ。
国家公務員では、本省の課長以上に航空機のビジネスクラス利用が認められている。それに相当するのが、独法などなら、役員以上になる。ところが、財務省が10年6月29日に発表した予算執行調査によると、6割が役員以外の幹部にも認められていた。
このうち、3法人は、一般職員にも利用が認められていたのだ。実際の利用実績で見ると、3法人には09年度の実績はなかったものの、ほかの法人では、平均で13%に達していた。
ファーストクラス利用は、国家公務員では、本省の審議官以上に認められている。これに対し、独法などでは、理事長、副理事長だ。しかし、09年度の実績はなかったものの、13法人でそれ以外の役員にも、さらに、2法人では、役員以外の幹部と一般職員にも認めていた。
一般職員にもビジネスないしファーストクラスまで認めていたのは、一体どこなのか。
これに対し、財務省の予算執行企画室では、「公表していない」と明かすのを拒否した。
格安チケット使わず、ときに正規運賃も
その理由として、予算執行企画室では「公表目的ではなく改善目的の任意調査であり、数字は公表しても個別具体的には明かせない」と説明する。
とはいえ、独法などには、多額の税金が使われている。このことを指摘すると、「甘いという批判はあるかもしれない」と認めた。
JICAでは、2009年度まで、管理職相当になる大卒後18年目以上の職員が利用できたとした。事業仕分け後の10年度からは、アジアなどの8時間以内の出張は、全員エコノミー利用とし、それ以上は、搭乗時間や大卒後の年数に応じてビジネスを利用できると改めた。これは、国家公務員以上の厳しい基準だという。08年度は57%がビジネスを利用していたが、今後は3割強に抑えたいとしている。
ファーストクラスについては、09年度までは、国家公務員と同じ基準だったが、仕分け後に、副理事長はビジネス利用と決めた。
航空会社の割引運賃も、08年度から、使える場合は使っているという。
ただ、ツアーの格安チケットは利用しておらず、時にはエコノミーなどの正規運賃も使うとした。「格安ものですと、航空便名が決まらなかったり、日程が変更できなかったりして、業務に差し支えます。また、アフリカなど割引運賃の設定がなかったり、複数の国に寄ったりする場合は、正規運賃を利用しています」(JICA報道課)。
未だに不況続きで、暮らしに苦しむ国民はますます増えている。今後、ほかの独法についても、事業仕分けの対象になることが求められそうだ。