実行のための財源確保に難しさ
その際、「経産省が実質的に材料を提供した」といい、さらに、今回の決定に向け、産業構造審議会(経産相の諮問機関)で議論し、6月1日に「戦略5分野で149兆円の市場と258万人の雇用創出」というビジョンをまとめ、これに国交省、総務省などの観光、通信などの分野の取り組みもくわえ、新成長戦略に仕上がった。
ただ、「政治主導」の流れで、数字はかなり荒っぽいものになった。09年末、事務方がそれなりに施策を積み上げてまとめた「20年度まで平均名目2.4%成長、20年度の名目GDP600兆円」という数字を、菅氏の「50兆円足せ」という鶴の一声で20年度GDP650兆円、20年度まで平均名目3%成長」という「現実離れした数字」(内閣府筋)になった。
また、法人税については、経産省が目指した、来年度に5%程度先行して引き下げるとの方針が、最終的に新成長戦略に書き込めなかった。財務相だった菅氏が首相に就いたことから「財務省の姿勢が強硬になった」(経産省筋)。野田佳彦財務相は早速、「税率や時期は政府税調で論議していく話だ」と釘を刺している。
マスコミなどの論評も、法人税引き下げを含め、新成長戦略を実行するための「財源確保に難しさ」(日経)、「財源めど立たず」(朝日)、「財源確保、道険しく」(毎日)など、一斉に疑問符をつけた。菅首相は、増税で成長分野に金を回して経済成長を実現するという「第3の道」を提唱する一方で、「消費税引き上げで財政再建」を表明したため、「成長と財政再建と税制の関係を整理して説明する必要がある」(エコノミスト)と指摘されている。