東証1部に上場する、気象情報サービス最大手のウェザーニューズ(WN)が、1986年6月の創業以来最高の売上高を記録する好決算を発表した。台風や豪雨、雪などの気象情報を必要とする企業は、航空会社や海運会社などの交通機関が多かったが、紫外線や花粉情報など、さまざまな気象情報が提供されるようになり、気象情報を必要とする企業が急速に増えてきた。
14万人のウェザーリポーターが情報提供
ウェザーニューズ(WN)の2010年5月期決算によると、売上高は前期比3.4%増の118億2400万円。経常利益が同10.7%増の22億5700万円、当期純利益は同20.4%増の14億2100万円だった。
利益剰余金を株主に還元。配当も従来1株あたり15円だった年間配当を10円引き上げて25円とした。すでに中間期に7.5円を配当しているので、この期末配当は17円50銭となる。
WNの事業は、航海や鉄道、航空などの「交通気象」を重点に置くBtoB(企業・法人)市場と、携帯電話やインターネット、マスメディアなどを通じて気象情報を提供するBtoS(個人・大衆)市場がある。
BtoB市場の売上高は、59億500万円。前期比3.4%減ったものの、創業のきっかけにもなった海運会社向けの航海気象では、運航を最適化する「Total Fleet Management Service」が好調に伸びて、このサービスを受ける船舶は全世界で4800隻にまで広がった。
一方のBtoS市場は、前期比11.3%増の59億1900万円。BtoS市場は、日々の天気から台風や大雨、大雪などの荒天や、その被害情報、交通機関への影響を情報発信するモバイル・インターネット事業が柱で、サポーター(有料会員数)は120万人いる。
じつは同社の気象情報の精度を高めているのが、このサポーターの中にいる、14万人のウェザーリポーターだ。たとえば、WNから「怪しい雲を見つけたら、メールをください」とリポーターに配信すると、「ゲリラ雷雨防衛隊」と呼ばれる隊員(リポーター)からリアルタイムでゲリラ雷雨の情報が寄せられる仕組みだ。「サポーターの中には、天気予報を見るだけでなく、参加して伝えたいという人がいて、その人たちとともに気象情報をつくっている」(広報担当者)と話す。
紫外線情報など化粧品会社からも引き合い
日本気象協会が一部を出資する「ハレックス」は、2009年にコンシューマー向けサービスとしては初めて、ファクスや衛生電話回線を使った「夏山ファクス」の提供をはじめた。長野県では山での遭難事故が08年に過去最悪を記録したこともあって、同社の気象情報を、山小屋に「山の天気」の情報として提供することにした。
同社の主たる収益源は法人分野で、インターネット事業者をはじめ、製薬会社や化粧品会社など、「気象情報を必要とし、自社の業務やサービスに気象条件が深くかかわる会社」(気象配信グループ)と契約を結んでいる。
たとえば、これからの季節だと外出時の紫外線情報は「美しい肌を保つ」ためには欠かせない「気象情報」で、化粧品会社からの情報提供の引き合いも多くなる。
1993年の気象業務法の改正で、一般向けの民間独自の気象予報ができるようになって以来、民間の気象情報サービス会社は増えた。気象庁によると、現在111社が気象情報の提供に必要な「予報業務許可」を得ている。このうち、いわゆる総合的な天気予報を提供する会社は61社。地震・火山情報のみを取り扱う会社は50社ある。
最近は、WEBサイトでの「天気予報」は当たり前になってきた。61社の中には気象予報士の免許を取って、ひとりで地域のお天気情報をネット配信する会社もある。
こうした小さな会社の収入は広告費でまかなわれているが、さらに花火大会などのイベント企画向けや、農業向けの日照時間や雨期・雨量の情報、流通・小売業向けには天候による売れ筋商品の傾向と対策といった、気象情報を使ったコンサルティング事業も出てきている。