90年近くの歴史をもつ「グリコのおもちゃ」が今年3月に生まれ変わり、親子の遊び道具として注目されている。お菓子についているおもちゃに定番のプラスチック製を止めて、素材に木を使用したのが特徴だ。
発売開始後、顧客からは「孫に買ってあげたい」「全部そろえたい」といった感想がグリコに寄せられ、反応は上々。「おもちゃ効果」もあったのか、3~5月の売り上げは前年同期比で70%増となった。
ぬくもりや独特の手触り肌で感じる
江崎グリコは2010年から、主力商品「グリコ」のおもちゃを、木製の「アソビグリコ」に改めた。全10種類で、小さくても実際に遊べるパズルやだるま落とし、また九官鳥のデザインをしたカスタネットのような「楽器」もある。
素材に木を用いたのは、おもちゃの開発を担当する江崎グリコマーケティング部の河瀬茂宏氏のこだわりだ。「最近のおもちゃは、ゲームをはじめバーチャルなものが多い。そこでぬくもりや独特の手触りを肌で感じられる木を選んだのです」と話す。プラスチックよりも「高級感」を出して、子どもたちに長く使ってほしいという狙いもあった。
しかし木を材料にした場合、「金型に流し込めば終わり」というわけにはいかない。角材を切ったり、ささくれを取り除いたり、とがった部分を削ったりといった「手作業」が増え、それだけコストもかかる。人件費を削るために中国の工場で製造し、試作と改善を繰り返した。おもちゃの種類を絞り込み、塗装の色の数やおもちゃのパーツ、大きさも必要最小限に抑えた。
もう一つ苦労したのは、安全性の確保だ。おもちゃの中でも「ままごとの皿」や「積み木」は、子どもの口に入ってしまうサイズ。万一飲み込んでのどにつまっても、気道を確保できるように「空気穴」を開けた。「安全面は最重要課題。ただ、お皿の真ん中にも穴があるので、『これは何ですか』と問い合わせがきたのは参りましたね」と河瀬氏は苦笑する。
「親子の楽しい会話増えました」
アソビグリコの「ファン」もできた。大阪在住で5歳と3歳の娘を持つ母親は、パズルで遊ぶことが多いと話す。5歳の姉がつくりあげると、妹は「どうやってやるの」と尋ね、母親や姉が教えるそうだ。「だるま落としは、すぐ失敗します。でも1回でもできると大喜び。それを見て私も『できたね』とほめてあげて、楽しい会話が増えました」と母親は話す。
シンプルなおもちゃなので、幼い子どもとも一緒に遊べるのが魅力のようだ。この姉妹は、かえるの「ギロ」(打楽器の一種)とカスタネットの二種類のおもちゃを鳴らしながら、「カエルの歌」を歌う。「私も一緒に『カエルのうたがー』って歌ったりしますよ」と母親。自身も、子どもの頃に遊んだ木製の積み木やコマを思い出して懐かしくなるという。
グリコの河瀬氏はドイツを訪れた際、子どもたちが木製のおもちゃを長く大事に使い、時には子ども同士がおもちゃを交換してまた使う習慣を知った。日本の子どもたちにも、おもちゃを使い捨てずに大事に遊んでほしい。アソビグリコにはそんな思いを込めたと話した。