政治漂流 2010参院選 
世襲が政治への門戸閉ざす 「世襲議員せめて1割に」
衆院議員・菅義偉さんに聞く

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マスコミの報道のあり方も、世襲と密接に関係

――具体的には、どんな反発の声があがっているのですか。

 「憲法で職業選択の自由は保障されているのに、世襲だけ排除するのはおかしい」というものです。ですが、彼らが議員になることを規制するものではありません。(親と)違う選挙区から出れば問題ありません。公募制度を行ってはいますが、「どうせ世襲だから決まらない(選ばれない)だろう」という声が上がっています。そこまで自民党が信用されなくなっているんです。

――菅直人首相以前の数代の首相も、いずれも世襲でした。歴代首相について、どのように評価しておられますか。

 麻生(太郎)さんは、父上(麻生太賀吉元衆院議員)が引退してから、ご自身が出馬するまでに、何年間も長い間ブランクがありましたので、後援会組織を作り直さないといけなかった。そういう意味では、世間で言われている「世襲」とは、少し違うと思っています。私が制限すべきだと考えているのは、例えば「父から息子に、すぐに引き継ぐ」といったパターンです。
   その上で申し上げると、麻生さんや安倍(晋三)さんなどは、小さい時から政治の世界に接していますので、物おじしないというか、安全保障や外交については「すごいな」という点が沢山あった。お二人に仕えて、大変素晴らしい方だと思いました。世襲そのものを全否定している訳ではありません。
   「4割はいくら何でも多い。最初は違う選挙区から出るなどして、1割ぐらいに減らすのが妥当なのではないか」というのが私の考えです。

――福田康夫元首相や、鳩山由紀夫前首相についてはいかがですか。

 世襲議員は、よく「弱い」「投げ出す」と言われますね。福田さんは、ずっと外交部会に所属していました。総理経験者を父親に持つ人は、安全保障・外交に長けているということはあると思います。鳩山さんの「政治とカネ」の問題は、ちょっとひどいですね。そういう方に国民の生活が分かるかというと、簡単にはいかないでしょうね。

――世襲議員は「出世が早い」ということも言われています。09年衆院選で例外的に公認された小泉進次郎衆院議員の存在感も増しているように見えます。

 永田町は本当にムラ社会で、人間関係がドロドロしている。父親に世話になった団体や、政治家は多くいますから、それが影響しています。小泉進次郎さんは、ものすごくマスコミが取り上げますが、世襲以外であれば、誰もマスコミは取り上げない。進次郎さんはしっかりした人で、メジャーになるが、一般の人(1年生議員)はそうはなれません。世襲でない議員の場合だと、任期を3~4期やって、やっとメディアに取り上げられるようになる、という具合です。マスコミの報道のあり方も、世襲と密接に関係しています。

菅義偉さん プロフィール
すが・よしひで 衆院議員、自民党神奈川2区支部長。1948年秋田県生まれ。高校卒業後上京し就職。働きながら法政大学を出て、サラリーマンだった26歳のとき「人生を政治にかけよう」と志を立てた。衆院議員秘書、横浜市議を経て、1996年衆院選挙で国政に。以後5期連続当選。総務大臣や党選挙対策総局長などを歴任し、現在に至る。
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