制服のように、学校指定の携帯電話を生徒に使ってもらう――。神戸市内の私立中学・高校が始めた「制携帯」が話題だ。「生徒と教師のコミュニケーションが取りやすくなった」というが、規制も多いだけに、どこまで広がっていくか。
制携帯を2010年4月から始めたのが、アスキー創業者の西和彦氏が学園長をしている須磨学園中学・高校だ。
「制携帯は使いたくない」と異論も
文科省は09年1月に、携帯電話の小中学校持ち込み禁止、高校内使用禁止を打ち出している。これに対し、同校では、禁止するよりも携帯の正しい使い方を教える方が大事だとして、学校指定の制携帯を導入した。
外部進学の新1年生に制携帯を義務付け、教員・生徒間や生徒同士の通話・メールに使ってもらう。月ごとに使用料がかかるが、キャリアの定額サービスを利用しているため、こうした通話料は無料だ。携帯サイトの閲覧や利用時間には制限を設けており、ネットいじめなど緊急時は、保護者の了解を得て学校がメール履歴を見たりGPSで居場所を確認したりできる。
在校生の希望者や教員も制携帯を使っており、現在は計520台が出ている。これまで持っていた私用携帯は、学校持ち込みが禁止になるものの、所持そのものは禁止していないという。
一方、生徒にとっては、学校から管理される可能性もあるだけに、導入前には異論も出た。生徒会が09年5月に行ったアンケートでは、「制携帯は使いたくない」と答えたのが3割にも上った。
また、ネット上の一部アンケでも、否定的な意見が多かった。gooのサイト「ニュース畑」が09年6月に賛否を募ったところ、反対が6割に上った。「悪質ないじめサイトやその他の実害が減少するとは思えません。むしろ、影でこそこそとする子が増えるような気がします」(近畿地方の40代女性)「携帯を持たせるか、持たせないかは各家庭で判断すること」(中部地方の30代男性)といった理由からだ。
一方で、「先生に相談しやすくなった」
導入からまだ3か月近くしかたっていないが、制携帯はうまくいっているのか。
須磨学園の広報担当者は、取材に対し、手応えをこう話す。
「非常に順調で、効果的になっています。教員と生徒のコミュニケーションが楽で密になりました。生徒も、家で勉強が分からないときは、教員にメールすることが増えています」
アンケート調査では、保護者の9割が肯定的だった。生徒からも、「先生に相談しやすくなった」との声が出ている。しかし、一方で「規制が厳しすぎる」との意見が生徒内に根強いようだ。結局、私用携帯の方ばかり使ってしまうことにならないのか。
この点について、広報担当者は、次のように説明する。
「フィルタリングをきつくしていますので、見られないタレントのサイトがあるかもしれません。しかし、生徒にもっと使ってもらえるように、少しずつ緩めていくようにはしています。デザインなども改善できるところは改善します。いずれは、私用携帯を止めてもらい、徐々に制携帯1台だけにしていくつもりです」
すでに、子どもの私用携帯を解約した親も何割かいるという。
今後、制携帯は、ほかの学校にも広がっていくのか。
広報担当者によると、須磨学園には教育関係者からの問い合わせが数多く来ている。また、同校が使っているauブランドのKDDI広報部によると、同様の携帯導入を検討している学校が全国で複数あるという。それだけに、「制携帯」導入の成否が今後注目されそうだ。