青果市場に持ち込むと正体がバレる
6月23日には、山形県天童市のサクランボ畑から高級サクランボ「佐藤錦」500キロ(約150万円相当)が盗まれた、と届け出があった。JAてんどう販売部担当者は、「今回は特別多い」と憤る。
温室みかんや無農薬温室レモン、米などを生産している河合果樹園(愛知)の生産者は、09年に盗難犯を現行犯逮捕した。犯人は前科五犯で、「自分で食べるために盗った」と話していたという。
最近は販売目的で大量に盗まれるケースが多く、河合果樹園の近くでもキャベツが1畝(1列)ごっそりと持って行かれた。盗んだ品を青果市場に持ち込むと、登録制なので正体がバレるため、通販サイトで売っている可能性が高いと見ている。農園や果樹園の直販サイトを名乗りながら、実態がないこともあるそうだ。
「農作物の盗難が相次いでいるのは、不景気のせいだけではないと思います。畑からというのは、店などで盗むよりも罪悪感が薄いようです。収穫するまでに長い時間と労力がかかっていることを知らない人もいます。農産物は生産者にとって労働の対価でありながら、お金に替えられない喜びでもあることも、わかってもらいたいです。大量に盗まれるようになり、モラルに訴えるレベルではないと見ています」
農家は人材不足と卸価格の下落による売上げ減で、「ものすごい勢い」で廃業している。盗難に遭ったのを機に廃業する生産者も少なくないという。