富士通と東芝が携帯電話端末事業を統合することで基本合意した。2010年10月1日をメドに共同出資会社を設立し、富士通が過半を出資する。両社を単純合算した国内シェアは2割弱で、シャープに次ぐ2位連合が誕生する。
ただ、6月17日の発表後も両社の株価が高騰することもなく、今ひとつ明るいニュースにはなりきっていない。赤字続きの東芝の携帯電話事業が富士通に救済された、という面もあるようだ。
国内市場は縮み、ピークの6割
新規加入者の伸び悩みや通信各社が買い替えサイクルを長期化させる販売方法に転換したことで、国内市場は縮んでいる。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計では09年度の移動電話(携帯・PHS)の国内出荷台数は、前年度比12.3%減の3142万台と、ピークの6割にまで落ち込んだ。
通信会社が仕様を指示して端末の全量を買い取るビジネスモデルのおかげもあって、国内の携帯電話は国内事情だけで食っていけた。半面、国内だけで独自の進化をとげ、国際的には通用しない「ガラパゴス化」とやゆされた。
そんな日本の技術を誇る空気も一部にないわけではなかったが、最近ではメーカー独自仕様の米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」などが販売を伸ばしており、もはや「ガラパゴス」は笑いごとではない。
こうした事情もあって端末メーカーの業界再編が進んでいる。08年に京セラが三洋電機の携帯電話事業を買収し、三菱電機は撤退。NEC、カシオ計算機、日立製作所は2010年6月1日に携帯電話事業を統合する会社を発足させた。今回の富士通、東芝連合の誕生によって、かつて狭い国土に11社がひしめいた国内メーカーは6グループに再編・集約される。
シャープ追い抜いてトップになるのが目標
東芝は08、09年度と携帯電話事業が赤字。海外企業に生産を委託しコスト削減を進めたが、国内シェアが4%を切るなかで開発費負担が重く、展望を見い出せなかった。富士通と交渉する前にはパナソニックやNECとの統合も模索した模様だ。
電電公社時代から歴史的にNTTグループに深く食い込む富士通は、NTTドコモが携帯電話端末の主力供給先。KDDIが主力で欧州にも展開し、スマートフォンも手がける東芝との事業統合は、製造・開発のコスト削減以外にもメリットはあると見たのだろう。
統合新会社には富士通のドコモ向け部隊は移さず、一応の「忠誠」は誓うが、東芝との新会社を通じてソフトバンクを含めた通信会社への供給の道が広がり、じわりとドコモからの「自立」に踏み込むことも可能だ。
まずは国内基盤を固めてシャープを追い抜いてトップになることを目標とし、ゆくゆくは成長が見込める世界展開を模索する考えとみられる。ただ、年間生産が億台単位のメーカーによる寡占化が続く世界市場で、「シェア1%にも満たない富士通・東芝連合が海外展開の拡大の糸口を見つけることは容易ではない」とアナリストは口をそろえて指摘している。