内閣府の景気動向指数研究会(座長・吉川洋東大教授)は2010年6月7日、景気が後退から拡大に転じた転換点である「景気の谷」が09年3月だったと判定した。内閣府は今回の判定を基に更に分析を進め、11年にも「景気の谷」を正式に確定する。今回の景気後退局面を、吉川座長は個人的見解として「リーマン不況」と名づけた。
「山」「谷」は、複数の経済指標を合成して判定する。今回の好況から不況への循環は、07年10月が「景気の山」とすでに認定済みで、ここで資源価格高騰などの影響で景気がピークをつけ、下り坂に入った。
「V字回復」に政府も浮かれ気味
その後、08年秋のリーマン・ショックが勃発して一気に下落が加速。比較可能な80年代初頭の第2次石油ショック以降では、「山」から「谷」までの景気動向指数の一致指数の下落率は20.2%と、バブル崩壊後の不況に次ぐ大きさだった。
さすが「100年に一度の大不況」といったところだが、「山」から「谷」までの景気後退局面の期間は17カ月で、戦後の混乱期を除き、計測可能な戦後14回の循環の平均(16カ月)とほぼ同じだった。また、急激な落ち込みの反動で、その後の回復が急ピッチ。09年4月以降の1年間の景気動向指数の上昇率は過去最大の21.4%に達した。
09年6月、与謝野馨経済財政担当相(当時)が、「(09年)1~3月が底だった」と、事実上の景気底打ちを宣言しており、今回の判定はそれを裏付けた。
こんな「V字回復」に政府も浮かれ気味で、6月18日に発表した6月の月例経済報告の基調判断を、前月までの「景気は着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く・・・」との表現から「景気は着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつある・・・」に上方修正。