民主・連立政権の内閣支持率が乱高下している。菅直人・新内閣の誕生で「支持率V字回復」を果たしたが、早くも2ケタ近く下落した調査も出てきた。「単独過半数か」との見方も一部で出ていたが、事態は流動的で、予測は極めて難しい。
菅内閣の支持率が前回の59%から50%へ9ポイント下落――朝日新聞の2010年6月21日朝刊は、こう伝えた。「前回」はわずか1週間前のことだ。参院比例区での投票先も、民主は前回43%から36%へと7ポイントも落ちた。
「消費税」が支持率に影響か
読売新聞(6月21日朝刊)の調査でも、内閣支持率は、1週間前の前回と比べ、4ポイント減の55%だった。
米軍普天間基地の移設問題を巡る迷走などで、内閣支持率が20%を割り込んだ鳩山由紀夫・前首相が辞任表明したのが6月2日だ。その直前は、参院選を目前に控え、改選組からは「これでは選挙が戦えない」と悲鳴が挙がっていた。改選数54議席のところ、「40議席を割る」とも「最悪30議席に届かない」ともささやかれた時期もあった。
ところが、6月4日に国会が菅氏を新首相に指名すると空気が一変し、8日の菅内閣発足直後には、朝日新聞(60%)など各社の内閣支持率の数字が60%台へと跳ね上がった。そうした流れを受け、週刊朝日(6月18日号)は「参院民主単独過半数か」の見出しで、60議席以上を獲得する可能性を指摘した。
民主党のある参院選選挙区関係者は6月上旬、J-CASTニュースの取材に対し、「重苦しい空気が一変した」「支持率はまだまだ上がる」と勢い付いていた。
ところが、早くも失速傾向が現れた。「内閣支持率9ポイント減」の理由について、21日の朝日新聞朝刊は、「首相が(消費税)引き上げに前向きと取れる発言をしたことで、消費税増税に反対の人たちの離反を招いているようだ」と分析している。
菅首相の主張「唐突な印象を与えた」
菅内閣の支持率や参院選での「投票先」の数字は、今後どのような推移を見せるのだろうか。このまま下落を続けるのか、また持ち直すのか。
政治アナリストの伊藤惇夫さんは「まだまだ風向きは安定しないので速断できない」とみる。菅内閣の誕生直後に支持率が「V字回復」したが、「単に看板が変わっただけ」だ。今後のちょっとした発言でも状況は変わる可能性がある。
「確かに終盤の鳩山内閣時と比べれば参院選へプラスのムードが出ているのは間違いないが、過半数確保云々を議論するにはまだ早すぎる」
朝日新聞が支持率低下の理由として指摘した消費税議論が、今後どう影響するかもはっきりしない。朝日新聞の世論調査でも、消費税引き上げに関する質問では、賛成46%(前回49%)、反対45%(同44%)と賛否が拮抗する傾向には変化がない。
伊藤さんは、「支持率9ポイント減」について、消費税議論そのものへの批判ではなく、菅首相の主張が「唐突な印象を与えたからだ」と分析する。民主党は昨09年夏の衆院選以降、「次の衆院選まで」「4年間は」消費税は上げない、と主張していた。この唐突感を放っておけば今後、支持率などにマイナスに作用するだろうし、説得力ある説明ができれば、必ずしも消費税論議がマイナスに働く訳ではない、とみている。