ジャスダックに株式上場する、スポーツクラブやホテルなどの運営を手がける愛知県の「東祥」の沓名俊裕社長が総額1億3581万円の役員報酬を受け取ったことが、2010年6月16日に公表した有価証券報告書でわかった。
上場企業は2010年3月期から、1億円以上の報酬を支払った役員の氏名や金額を有価証券報告書などで公表することが義務付けられた。すでに資生堂の前田新造社長が1億2100万円を受け取ったことが明らかになったり、日産自動車のカルロス・ゴーン社長の報酬が株主総会の召集通知の資料から10億円以上になるのではないか、との憶測が飛んだりするなかで、新興企業からも億万長者が登場した。
不動産業からスポーツクラブへの事業転換が成功
東祥は1979年に創業。土木・建設請負業がスタートだった。89年に分譲・賃貸マンション事業に進出。96年に「ホリデイスポーツクラブ三河安城」を開業し、スポーツクラブ事業に進出した。
「東祥」ではなじみが薄いが、愛知県を中心に現在、全国に37か所ある「ホリデイスポーツクラブ」の看板は目にしたことがあるかもしれない。
転機となったのは2004年。この年にジャスダックに上場したこともあるが、沓名社長の決断で、スポーツクラブ事業に大きく舵を切った。「04年度は、まだ不動産事業の売り上げのウエートが高かったが、今回(10年3月期)の決算ではスポーツクラブ事業が8割を占めるようになった」(IR室)。06年にはジャスダック市場の所属業種も不動産業からサービス業に変更した。
世界的な景気悪化などで不動産業界が低迷していたときに、うまく業種転換できたことが成長をもたらしたのだが、「賃貸マンションや駐車場などのテナント収入はいまも底堅く、事業のウエートは下がってはいるものの、当社の収益基盤に変わりはない」と説明。スポーツクラブ、ホテル、マンション事業の3本柱で、増収基調を続けている。
「これまでの実績を考えれば、違和感はありません」
東祥が運営する「ホリデイスポーツクラブ」は、16歳以上の会員制。「健康」をキーワードに、競技志向ではない、「大人のため」のスポーツクラブを標榜している。初心者や年齢の高い人が少なくなく、会員の「主力」になっているところが、「他のスポーツクラブと違う」(IR室)という。
ジャスダック上場以降は右肩上がりの成長で、2010年3月期の売上高は105億円、経常利益は20億円、当期純利益は11億円だった。役員報酬は、沓名社長が1億3581万円。社外取締役を除く取締役8人の合計は2億7660万円に上った。
沓名社長は「東祥」の創業者でもあり、妻も副社長に名を連ねる。沓名家で株式の約8割を占めている。
社員数は158人(パートなどを含めると約400人)。平均年齢が26.4歳と若いことがあるが、平均年間給与は374万5000円だ。そんな社員たちが、億万長者の社長の存在をどう感じているのか、気になるところだが、「いまの会社の業績や、これまで事業を構築してきたことを考えれば、とくに違和感はありません」と話す。