親方、力士ら65人もの賭博が明るみに出て、大相撲名古屋場所の中止危機が報じられている。最近の不祥事続きで、相撲協会は公益法人の資格を返上せよと大手新聞が社説で主張するほどの事態だ。
「優勝した人や三賞を獲った人が『賭博やってますか?』と聞かれるような状況で、場所が成り立つんですかねえ。成り立たないということです」
朝日が社説で公益法人の返上を主張
文科省の芦立訓競技スポーツ課長は2010年6月16日、こう言葉を荒げたという。スポニチが報じたものだ。
この日は、同省が所管している日本相撲協会の幹部らが、賭博問題で報告に訪れた。これで3日連続の文科省詣でだ。これに対し、同省は、悪質なケースでは力士なら個々の番付を開示するなど、警察の捜査に支障のない範囲で、情報公開するよう強く求めた。ところが、刑事事件になりうるのに、協会側は、賭博の申告者を厳重注意に留めただけで、力士らの情報も明かそうとはしなかった。
これでは、清廉潔白な力士でも、国民から疑念を持たれてしまう。そう考えて、課長は協会幹部らに怒りをぶちまけたわけだ。
暴行死、大麻、暴力団介入…。このところ、角界は、不祥事続きだ。そこに、今回のような大量の賭博関与者が明るみに出た。
この状況下で、公益法人としての相撲協会そのものにも疑問の目が向けられている。朝日新聞は、17日の社説で、「当事者たちに、自浄能力は期待できない」として、公益法人の資格を返上せよとさえ主張した。
財団法人の相撲協会は、税の優遇措置を受けている。30%の法人税を課せられる株式会社と違い、本場所や巡業など主力の収益事業には22%の法人税しかかからない。そんな資格は、自浄能力のない相撲協会にはないということだ。
スポンサー離れの兆し
返上を待つまでもなく、文科省でも、相撲協会の解散命令の言葉が口に出るまでになっている。実際はまだそんな状況ではないようだが、日刊スポーツによると、文科省の芦立訓競技スポーツ課長は2010年6月14日、「相撲協会の株式会社化?それもある」とさえ述べた。
法人組織に詳しいある証券会社幹部は、公益法人としての相撲協会について、こう指摘する。
「一般の人でも株主になれる株式会社なら、こんな不祥事多発はありえないですよ。すぐに株価が下がって、会社が潰れてしまいますからね。株主からは、『ちゃんとやってくれ』とかなりのプレッシャーがかかるはずです。まともな会社なら、情報開示に努めるでしょうね。今回の問題なら、番付の開示だけでは疑念が解消しないので、力士らの実名も出さないと難しいはずです」
もちろん、相撲は、日本伝統の国技だけに、単純に一般の会社と比較するのは強引過ぎるかもしれない。しかし、かなりずさんな経営であることは確かなようだ。
相撲協会は、ここ数年は、人気低迷による収益事業の赤字で、法人税を収めていない。さらに、今回の問題で、多額の懸賞金を出している永谷園が撤退も検討するなど、スポンサー離れの兆しも現れている。このまま、不健全経営が続けば、今度は国民が黙っていないかもしれない。