菅直人内閣の発足に、日銀内で警戒感が広がっている。菅首相といえば、これまでもデフレ脱却に向けて日銀へさまざまな「プレッシャー」をかけてきたが、今度は野田佳彦氏の財務相昇格に伴い、後任の副大臣に「デフレ脱却議連」顧問の池田元久氏が就任したからだ。参院選を目前に控え、日銀の「包囲網」が狭まる可能性もありそうだ。
菅首相は2010年6月4日の民主党代表選にあたって公表した政見要旨で、「日銀と協力してデフレ脱却に取り組む」と強調した。
白川総裁はインフレ目標に否定的
副総理兼財務相だった4月には、政府が消費者物価の上昇率を金融政策の目標として定める「インフレ目標」について、「魅力的な政策と感じている」とも発言。「プラス2%程度を実質的な意味での目標とし、達成するまで日銀としても努力していただく」とたたみかけた。
日銀の白川方明総裁は、「物価上昇率だけに注目した金融政策運営はバブルを防げない」と繰り返し指摘しており、インフレ目標導入に否定的な立場。それにもかかわらず、菅氏が日銀へ圧力をかけ続けるのは、政府の経済財政政策に手詰まり感が否めないためだ。
景気は回復基調にあるものの、外需頼みの面が強く、最重要課題のデフレ克服の見通しは立たない。菅首相は「強い経済、強い財政、強い社会保障」を掲げ、「増税しても使い道を間違えなければ、景気は回復する」と主張するが、財政再建と成長戦略の両立は「誰がやっても難題」(アナリスト)だ。