小惑星探査機「はやぶさ」の大気圏突入では、「ユーストリーム」や「ニコニコ動画」では、多くの人が生中継に見入り、はやぶさの最後の姿を見届けた。ネット上での関心度は非常に高く、中継サイトはパンク状態。ところが、地上波で生中継をしたテレビ局は皆無で、放送局に対する失望の声があがっている。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2003年5月に打ち上げた「はやぶさ」は、05年11月には地球から約3億キロ離れた小惑星「イトカワ」に着陸。砂や石の採取を試みたが、燃料漏れが発生。約7週間にわたって通信が途絶した。
「ニコニコ動画」や「ユーストリーム」大人気
エンジンなどの故障にも見舞われ、当初の予定か3年遅れで地球への帰還となった。「はやぶさ」は10年6月13日にカプセルを分離し、同22時51分(日本時間)ごろ、オーストラリア上空で大気圏に突入し、強い光を出しながら落下した。
「奇跡の帰還」と言われるだけに注目度も高く、帰還の様子を中継したJAXAのサイトはつながりにくい状態が続いたほか、「ニコニコ動画」の特番も延べ約21万人が視聴。サイト内でもかなりの人気で、「プレミアム会員」と呼ばれる有料会員ですら見られない人がいた。和歌山大学のチームが現地から「ユーストリーム」で配信していた動画も、やはり「重い」状態が続いた。
「重い」という制約はあるものの、いずれの動画中継でも「はやぶさ」の大気圏突入をネット利用者は目撃することができた。対照的なのがテレビで、地上波で生中継した局は皆無だった。
大気圏突入の瞬間に生放送の番組を行っていたのは、NHK(総合)と、フジテレビだ。NHKはワールドカップのセルビア対ガーナ戦を中継する一方、フジテレビは情報番組「Mr. サンデー」で、「消費しない若者たちのホンネ」と題した特集を放送していた。
なお、翌6月14日の朝刊各紙の多くは、このニュースを1面のトップにもってきており、総じて、ニュースとして価値が極めて高いと判断されていることが分かる。にもかかわらず、6月13日深夜の段階でのテレビ各局の扱いは、非常に小さいものだった。
NHKは、突入からおよそ1時間後の23時48分から約10分間にわたってニュースを放送したが、はやぶさの話題は「完全スルー」。さらに1時間後の午前1時のニュースで、初めて大気圏突入の映像を放送した。
NHK「回答は控えさせていただきます」
民放は、日本テレビが1時3分、TBSが0時43分、フジテレビが23時45分に短く報じたものの、現場からの映像はなく、いずれもJAXA提供のCGが流れるのみだった。テレビ朝日とテレビ東京は、帰還の話題を取り上げることすらしなかった。
テレビでの生中継がなかったことに対して、ネット上では失望の声が多くあがり、その矢面に立たされた形なのが、NHK広報局のアカウント(@NHK_PR)だ。最初は
「大気圏突入のタイミングには、ちょうどW杯の試合を放送しているので、生中継は難しそうです」
などと冷静に理解を求めていたのだが、大量の批判に
「あまりの数に圧倒されておりまして…」
と困惑。
「さすがに限界かも知れません」
と、心が折れたかに見える書き込みもあった(すでに削除)。
ネット上では「大ブーイング」といった様相だが、NHKの広報局によると、
「『はやぶさ』に関するお問い合わせなどは寄せられていますが、件数は集計していません」
と、実際にNHKに意見した人がどの程度いるかは不明だ。また、生中継を見送った理由については
「回答は控えさせていただきます」
と、回答を拒否した。
なお、6月14日朝からは、各局とも比較的大きめの取り扱いをしている。
JAXAは6月14日夕方になって、カプセルの回収に成功したことを発表している。